Excelで作成した表や資料を印刷しようとして、印刷プレビューを確認したら、画面上では正しく表示されていた図形や文字の位置がずれていたという経験はありませんか?
特に、図形やテキストボックス、グラフなどを配置した資料で、印刷プレビューを見ると位置が大きくずれていたり、文字が切れて消えていたりするという問題が発生します。
画面上では完璧に配置していたのに、印刷プレビューではレイアウトが崩れてしまうのは、非常にストレスです。何度も位置を調整して印刷プレビューで確認する作業を繰り返すと、資料作成の効率が大幅に低下してしまいます。
この問題は、Excelが古くから抱えている仕様上の課題で、図形がセルのサイズに連動する設定になっていたり、プリンタードライバーの違いによってレンダリング方法が異なったりすることが原因です。また、セル内の文字が折り返し表示されている場合、画面と印刷で表示が微妙に異なることもあります。
本記事では、印刷プレビューで図形や文字がずれる具体的な原因と、図形のプロパティ設定、セルの書式調整、改ページ設定など、効果的な対処法を詳しく解説します。
印刷プレビューと実際の印刷結果を一致させたい方は、ぜひ最後までお読みください。
ポイントは
・図形のプロパティを「セルに合わせて移動やサイズ変更をしない」に設定する
・セル内の文字は「折り返して全体を表示する」で改行して調整する
・改ページプレビューで印刷範囲を正確に確認して調整する
です。
それでは詳しく見ていきましょう。
印刷プレビューで図形がずれる原因
まずは、なぜ印刷プレビューで図形や文字がずれてしまうのか、その原因を理解しましょう。
図形がセルに連動する設定になっている
図形がずれる最も一般的な原因は、図形がセルのサイズや位置に連動する設定になっていることです。
Excelでは、図形を挿入したときのデフォルト設定が「セルに合わせて移動やサイズ変更をする」になっています。この設定では、セルの幅や高さが変わると、図形も自動的に移動したりサイズが変わったりします。
印刷時には、プリンタードライバーの独自フォントの影響でセル幅が微妙に変化することがあります。すると、図形もそれに連動して位置がずれたり、サイズが変わったりしてしまいます。画面上では正しく配置されていても、印刷プレビューや実際の印刷では図形がずれて表示されるという現象が発生します。
プリンターによるレンダリングの違い
印刷プレビューと実際の印刷で結果が異なる原因として、プリンターごとのレンダリング方法の違いがあります。
印刷プレビューは「画面用の再現」であり、厳密には実際の印刷出力のシミュレーションとは異なります。プリンターの解像度やドライバーの処理方法によって、実際の印刷では図形の位置が微妙にずれることがあります。
特に、異なるプリンターで印刷すると、同じファイルでも図形の位置が変わってしまうことがあります。これは、プリンター固有のフォントや余白の処理方法が異なるためです。
表示倍率とディスプレイ解像度の影響
画面上での表示倍率やディスプレイの解像度も、印刷時のずれに影響します。
画面を拡大表示(150%など)で作業していると、実際の印刷サイズとの誤差が大きくなります。印刷に近い正確な表示にするためには、100%表示(実寸)で作業することが推奨されます。
また、高解像度ディスプレイと標準ディスプレイでは、セルや文字の表示サイズが微妙に異なるため、異なるパソコンで作業すると図形の位置がずれることがあります。
| ずれの原因 | 発生する症状 | 影響範囲 |
|---|---|---|
| セル連動設定 | 図形が印刷時に移動・変形する | 図形・グラフ・テキストボックス |
| プリンタードライバー | プレビューと実際の印刷が異なる | すべてのオブジェクト |
| 表示倍率 | 画面と印刷のサイズ感が異なる | レイアウト全体 |
| セル内文字の折り返し | 文字が切れる・消える | セル内の長文 |
図形のプロパティ設定で対処する
図形のずれを防ぐ最も効果的な方法は、プロパティ設定を変更することです。
「セルに合わせて移動やサイズ変更をしない」に設定する
図形を印刷時にずれないように固定するには、プロパティを「セルに合わせて移動やサイズ変更をしない」に変更します。
図形を右クリックして「図形の書式設定」を選択します。右側に表示されるパネルで、「サイズとプロパティ」アイコン(四角形と定規のアイコン)をクリックします。「プロパティ」セクションで、「セルに合わせて移動やサイズ変更をしない」にチェックを入れます。
この設定にすると、図形はセルのサイズや位置に影響されなくなります。行や列を挿入・削除しても、図形は移動せず、印刷時にもずれにくくなります。
グラフの場合の設定方法
グラフがずれる場合も、同様にプロパティ設定を変更します。
グラフを右クリックして「グラフエリアの書式設定」を選択します。「サイズとプロパティ」アイコンをクリックし、「プロパティ」セクションで設定を変更します。
グラフの場合、「セルに合わせて移動やサイズ変更をしない」に設定するとずれが改善されることもあれば、逆に「セルに合わせて移動やサイズ変更をする」に変更した方が良い場合もあります。印刷プレビューで確認しながら、最適な設定を選択しましょう。
複数の図形やグラフがある場合、それぞれ個別に設定を変更する必要があります。すべての図形を一度に選択して設定を変更することはできないため、1つずつ右クリックして「図形の書式設定」から設定を変更してください。
作業を効率化するには、最初に挿入する図形でプロパティを設定してから、その図形をコピーして使用する方法がおすすめです。
Altキーを使ってセルに吸着させる
図形を挿入する段階で位置を安定させるには、Altキーを使ってセルのグリッド線に吸着させます。
図形を挿入する際、Altキーを押しながらドラッグすると、図形がセルのグリッド線にぴったり吸着します。セルの枠線に合わせて配置することで、レイアウトが安定し、印刷時のずれも少なくなります。
また、「表示」タブで「グリッド線」にチェックを入れて表示しておくと、図形を正確に配置しやすくなります。
| 対処法 | 操作手順 | 効果 |
|---|---|---|
| プロパティ変更(図形) | 右クリック→図形の書式設定→サイズとプロパティ→「セルに合わせて移動やサイズ変更をしない」 | 印刷時の位置ずれを防ぐ |
| プロパティ変更(グラフ) | 右クリック→グラフエリアの書式設定→サイズとプロパティ→設定変更 | グラフのずれを防ぐ |
| Altキーで吸着 | Altキーを押しながら図形をドラッグ | セルのグリッドに正確に配置 |
セル内の文字がずれる場合の対処法
セル内の文字が印刷時に切れたり消えたりする場合の対処法を確認しましょう。
「折り返して全体を表示する」を使う
セル内の文字が印刷時に切れる問題は、「折り返して全体を表示する」機能を使って解決します。
文字が切れているセルを選択し、「ホーム」タブの「配置」グループにある「折り返して全体を表示する」ボタンをクリックします。すると、セル内で自動的に文字が折り返され、すべての文字が表示されるようにセルの高さが調整されます。
印刷プレビューで確認し、文字が正しく表示されていることを確認してください。文字が意図した位置で改行されていない場合は、Alt+Enterキーで手動改行を追加して調整できます。
列幅を自動調整する
列全体の文字が切れている場合は、列幅を自動調整します。
列番号(A、B、Cなど)の境界線をダブルクリックすると、その列の最も長い文字列に合わせて列幅が自動調整されます。複数の列を一度に調整したい場合は、列番号をドラッグして複数列を選択してから、いずれかの列の境界線をダブルクリックします。
この方法で、列に含まれる文字列がぎりぎり印刷できるジャストサイズに調整されます。右側に少し隙間ができるように見えますが、これは印刷に必要な余白です。
テキストボックスの文字がずれる場合
テキストボックス内の文字が印刷時にずれる場合、テキストボックスを図として貼り付ける方法が有効です。
テキストボックスを選択してコピーし、「ホーム」タブの「貼り付け」ボタン下の▼をクリックして「図」→「図として貼り付け」を選択します。すると、テキストボックスが画像として貼り付けられ、印刷時のずれが発生しなくなります。
元のテキストボックスは削除するか、図の下に隠しておきます。ただし、この方法では後から文字を編集できなくなるため、最終版を作成する段階で使用してください。
| 症状 | 対処法 | 操作方法 |
|---|---|---|
| セル内文字が切れる | 折り返して全体を表示 | セル選択→ホームタブ→折り返して全体を表示 |
| 列幅が足りない | 列幅の自動調整 | 列境界線をダブルクリック |
| テキストボックスがずれる | 図として貼り付け | コピー→貼り付け▼→図として貼り付け |
| 手動で改行したい | Alt+Enterで改行 | 改行位置でAlt+Enter |
改ページ設定とページレイアウトの調整
印刷範囲全体のずれを防ぐには、改ページ設定を活用します。
改ページプレビューで確認する
印刷範囲を正確に把握するには、改ページプレビューモードを使用します。
「表示」タブの「改ページプレビュー」をクリックすると、青い点線で印刷範囲が表示されます。このモードでは、どの部分が何ページ目に印刷されるかが一目で分かります。
図形やグラフが改ページの境界線にかかっていると、ページをまたいで分割されてしまうため、境界線をドラッグして調整するか、図形の位置を移動して1ページ内に収めます。
「次のページ数に合わせて印刷」を使う
複数ページにわたる表を印刷する際のずれは、「次のページ数に合わせて印刷」機能で解決できます。
「ページレイアウト」タブの「拡大縮小印刷」セクションで、「幅」と「高さ」をそれぞれ「1ページ」に設定すると、シート全体が1ページに収まるように自動的に縮小されます。または、「幅」を「1ページ」、「高さ」を「自動」に設定すれば、横幅だけを1ページに収めて、縦は必要なページ数に分割されます。
この設定により、意図しない位置でのページ分割を防ぎ、レイアウトのずれを最小限に抑えられます。
余白を調整する
印刷プレビューで図形が用紙からはみ出している場合、余白を調整します。
「ページレイアウト」タブの「余白」をクリックし、「狭い」または「ユーザー設定の余白」を選択して余白を小さくします。余白を狭くすることで、印刷可能な範囲が広がり、図形や表が用紙内に収まりやすくなります。
ただし、余白を極端に小さくすると、プリンターによっては印刷できない場合があるため、最低限の余白(上下左右5mm程度)は確保しておきましょう。
Excelで印刷プレビューがずれる問題は、図形がセルに連動する設定になっていることや、プリンタードライバーの違い、セル内文字の折り返し設定など、複数の原因があります。
最も重要な対処法は、図形やグラフのプロパティを「セルに合わせて移動やサイズ変更をしない」に設定することです。この設定により、印刷時にセル幅が変わっても図形の位置が固定され、ずれを防ぐことができます。
セル内の文字が切れる場合は、「折り返して全体を表示する」機能を使うか、列幅を自動調整することで解決できます。テキストボックスの場合は、図として貼り付けることで印刷時のずれを防げます。
改ページプレビューで印刷範囲を正確に確認し、「次のページ数に合わせて印刷」機能や余白調整を活用することで、レイアウト全体のずれを最小限に抑えられます。
まとめ エクセルで印刷プレビューがずれる対処法
エクセルで印刷プレビューがずれる場合の対処法をまとめると
・主な原因は図形がセルに連動する設定になっている、プリンタードライバーの違いでレンダリング方法が異なる、表示倍率やディスプレイ解像度の影響、セル内文字の折り返し設定
・図形のずれ対処法は右クリック→図形の書式設定→サイズとプロパティ→「セルに合わせて移動やサイズ変更をしない」に設定、グラフも同様にグラフエリアの書式設定から変更、Altキーを押しながら図形をドラッグしてセルに吸着
・文字のずれ対処法は「折り返して全体を表示する」で自動改行、列幅の境界線をダブルクリックで自動調整、テキストボックスは「図として貼り付け」で固定、Alt+Enterで手動改行を追加
・レイアウト全体の調整は改ページプレビューで印刷範囲を確認、「次のページ数に合わせて印刷」で自動縮小、余白を「狭い」に変更して印刷範囲を拡大、100%表示で作業して実寸を確認
これらの対処法を状況に応じて組み合わせることで、印刷プレビューと実際の印刷結果を一致させられます。
最も重要なのは、図形のプロパティ設定を変更し、印刷プレビューで必ず確認してから印刷することです。
図形を「セルに合わせて移動やサイズ変更をしない」に設定し、改ページプレビューで全体を確認しましょう。
印刷プレビューと実際の印刷を一致させることで、無駄な印刷ミスを防ぎ、効率的な資料作成を実現できます!