空気には「重さ」があることをご存知でしょうか?
私たちは日常的に空気の中で生活していますが、その空気が上から押しつけている力が大気圧(たいきあつ)です。
天気予報で「高気圧」「低気圧」という言葉をよく耳にしますが、そもそも気圧とはどんな概念なのか、大気圧との違いは何なのか、疑問に感じたことはありませんか?
この記事では、大気圧とは何かをわかりやすく解説するとともに、気圧との違い、単位の読み方、1気圧の公式・計算方法、そして自宅でも試せる実験まで、幅広く紹介していきます。
理科の授業で学んだ記憶はあるけれどうろ覚え、という方にも、ゼロからしっかり理解できる内容になっていますので、ぜひ最後までお読みください。
大気圧とは何か?結論からわかりやすく解説
それではまず、大気圧の基本的な意味と、気圧との関係について解説していきます。
大気圧(atmospheric pressure)とは、地球を取り巻く大気(空気の層)が、地表にいる私たちやあらゆる物体に対して上から押しつけている圧力のことです。
地球の周囲には約100kmにわたる大気の層が存在しており、その空気には質量(重さ)があります。この空気の重みが、1平方メートルあたりに均等にかかっている力が大気圧です。
大気圧は、水の沸点にも深く関わっています。海面では水は100℃で沸騰しますが、富士山頂(約3,776m)では気圧が約0.65気圧まで下がるため、約87℃前後で水が沸騰します。登山やキャンプで高地料理が難しいのは、この大気圧の変化が原因です。
ここで、よく混同されやすい「気圧」との違いについても確認しておきましょう。
大気圧と気圧の違い
「気圧」は、大気中の任意の場所にかかる圧力の総称です。
一方、「大気圧」は特に「大気によって生じる圧力」という意味合いを持ちます。日常会話ではほぼ同じ意味で使われることが多いですが、厳密には、気圧のうち大気によるものを指すのが大気圧です。
たとえば、水中での圧力は「水圧」と呼ばれますが、水圧と大気圧が合わさったものが水中での「全圧」になります。高校物理や化学では、この区別が問題を解く上で重要になることがあります。
| 用語 | 意味 | 使用場面 |
|---|---|---|
| 気圧 | 大気中の圧力の総称 | 天気予報、日常会話 |
| 大気圧 | 大気(空気の重み)による圧力 | 物理・化学の授業、専門的文脈 |
| 水圧 | 水の重みによる圧力 | 潜水・水中環境の説明 |
大気圧が生じるメカニズム
大気圧が発生する仕組みを少し詳しく見てみましょう。
地球の重力は、大気中のすべての気体分子を地球の中心へ向かって引きつけています。この重力によって、上空にある空気が下の空気を押しつぶすように積み重なっています。
そのため、地表に近いほど上の空気の重みが大きくかかるので、地表付近では大気圧が高くなります。逆に、高い山の山頂や上空では大気の層が薄くなるため、気圧は低くなります。
飛行機に乗ったときに耳が「ツーン」とする感覚は、機内の気圧と外の気圧の差が体に影響を与えているためです。これも大気圧の変化が体感できる例のひとつといえます。
高気圧・低気圧との関係
天気予報で登場する「高気圧」「低気圧」とは、周囲と比べて相対的に気圧が高い・低い領域のことです。
高気圧の中心付近では空気が下降するため、雲が散りやすく晴れることが多く、低気圧の中心付近では空気が上昇して雲が発達しやすく、雨や曇りになりがちです。
大気圧そのものはほぼ一定ですが、地域や天候によって微妙に変化しており、この差が天気を作り出しているのです。
また、標準大気圧(1気圧)は海面上での平均的な値であり、実際には季節・緯度・天候によって1日の中でも数hPa程度の変動があります。台風が接近すると気圧が急激に下がることがありますが、それも大気の動きが激しくなっているサインです。日常生活の中で気圧の変動を意識してみると、天気の読み方もより深く理解できるでしょう。
大気圧の単位とは?ヘクトパスカル・atm・Paの違い
続いては、大気圧を表すさまざまな単位について確認していきます。
大気圧の単位には歴史的な経緯から複数の種類が存在しており、場面によって使い分けられています。代表的なものを整理しておきましょう。
パスカル(Pa)とヘクトパスカル(hPa)
パスカル(Pa)は、圧力のSI単位(国際単位系)であり、1平方メートルあたりに1ニュートンの力がかかるときの圧力です。
1Paは非常に小さい単位なので、気象分野では「ヘクトパスカル(hPa)」がよく使われます。「ヘクト(h)」は100倍を意味するので、1hPa=100Paです。
天気予報で「現在の気圧は1013ヘクトパスカルです」のように使われているのを聞いたことがある方も多いでしょう。これが1気圧に相当する標準的な値です。
| 単位 | 読み方 | 1気圧との換算 | 主な使用場面 |
|---|---|---|---|
| Pa(パスカル) | パスカル | 101,325 Pa | 物理・工学の計算 |
| hPa(ヘクトパスカル) | ヘクトパスカル | 1013.25 hPa | 天気予報・気象 |
| atm(気圧) | アトム / 標準気圧 | 1 atm(定義値) | 化学・物理の基準 |
| mmHg(水銀柱ミリメートル) | ミリメートル水銀柱 | 760 mmHg | 医療・血圧計 |
| bar(バール) | バール | 1.01325 bar | 工業・流体力学 |
atm(標準気圧)とは
atm(アトム)は「standard atmosphere(標準気圧)」の略で、1気圧の定義に使われる単位です。
化学や物理の教科書で「標準状態」を定義するときに登場し、1 atm=101,325 Paと定義されています。
日本の高校理科では「1気圧=1.013×10⁵ Pa」と覚えさせられることが多いですが、これはatmをPaに換算した値です。単位の換算がスムーズにできると、試験でも大変役立ちます。
なお、化学の分野では近年「bar(バール)」を標準圧力として採用する場面も増えてきています。1 bar=100,000 Paであり、1気圧(101,325 Pa)より少しだけ小さい値です。国際純正・応用化学連合(IUPAC)の勧告では、標準圧力として1 barを使うことが推奨されていますが、日本の高校教育では引き続き1 atm=101,325 Paが主流です。文脈によって使い分けが必要なため、両方の値を把握しておくと安心です。
mmHg(水銀柱ミリメートル)について
mmHgは、水銀気圧計を使って測った圧力の単位です。17世紀にトリチェリが行った気圧の実験に由来しており、760 mmHg=1気圧という関係があります。
現在でも血圧の単位として「mmHg」が医療の場面で広く使われています。「血圧120/80 mmHg」というのは、まさにこの単位です。大気圧と人体の関係を考える上でも重要な単位といえます。
また、潜水(ダイビング)の分野では、水深10mごとに約1気圧ずつ圧力が増加します。水深30mでは4気圧(大気圧1気圧+水圧3気圧)という環境になるため、ダイバーが使う器具や安全管理には気圧の知識が欠かせません。大気圧の概念が、日常から専門的な分野まで幅広く応用されているのがわかります。
1気圧の公式と計算方法【圧力の求め方を徹底解説】
続いては、1気圧の定義と、圧力を求める公式・計算方法について詳しく見ていきます。
圧力の基本公式
圧力(P)は、面積(S)あたりにかかる力(F)として定義されます。
P:圧力(Pa)
F:力(N:ニュートン)
S:面積(m²)
例)面積2m²の板に100Nの力がかかるとき
P=100÷2=50 Pa
この公式を使うと、ある面積に対してどれだけの力がかかっているかを数値で求められます。日常生活では、たとえばヒールの細いハイヒールが床をへこませやすいのも、接触面積が小さく圧力が大きくなるためです。
1気圧(1 atm)の定義と数値
1気圧(1 atm)は、国際的に以下のように定義されています。
これは、緯度45度の海面上における標準的な大気圧を基に定められた値です。
この値は気温や地域によって多少異なりますが、物理・化学の計算では「1atm=101,325Pa」を標準値として用います。
大気圧の計算例:液柱を使った求め方
大気圧を液柱(水銀柱など)を使って表す方法も重要です。
P:圧力(Pa)
ρ(ロー):液体の密度(kg/m³)
g:重力加速度(9.8 m/s²)
h:液柱の高さ(m)
水銀(Hg)の密度:13,600 kg/m³
h=0.76 m(760 mm)のとき
P=13,600×9.8×0.76
≒101,136.8 Pa
≈101,325 Pa(≒1気圧)
この計算が、1気圧=760 mmHgの根拠です。
この計算はトリチェリの実験でも実際に確かめられており、歴史的に非常に重要な実験のひとつです。試験でもこの計算の流れが問われることがあるため、しっかり押さえておきましょう。
大気圧を体感できる実験3選【自宅でも試せる理科実験】
続いては、大気圧をわかりやすく体感できる実験を紹介していきます。
大気圧は目に見えませんが、身近なものを使って実感できる実験が複数あります。理科の自由研究にも使えるアイデアばかりです。
実験①:ペットボトルをへこませる実験
用意するもの:ペットボトル(500ml)、お湯
空のペットボトルにお湯を少し入れてよく振り、熱い空気で内部を満たします。その後フタをしてペットボトルを冷水で冷やすと、ペットボトルが自然にへこんでいきます。
これは、内部の空気が冷えて体積が縮み、外の大気圧(1気圧)が内側よりも強くなることでペットボトルが押しつぶされる現象です。大気圧の力がいかに大きいかを視覚的に体感できる実験です。
この実験で大切なのは、ボトル内の気体の量は変わらないのに、温度が下がることで気体の体積が小さくなる点です。これは「シャルルの法則(温度と体積の比例関係)」と結びついており、気体の性質を理解する上でも非常に役立つ実験といえます。子どもと一緒に試してみると、科学への興味が広がるきっかけになるでしょう。
実験②:コップと紙でつくる「大気圧の逆さコップ」
用意するもの:コップ、水、厚手の紙(はがき程度)
コップに水をいっぱい入れ、紙をフタのように置いてからコップをひっくり返します。手を紙から離しても、水は落ちずに紙の上に留まります。
水の重さ(重力)よりも、紙の外側から押し上げる大気圧の力の方が大きいため、水がこぼれない仕組みです。約1気圧=約10トン/m²という圧力の大きさが実感できる実験です。
水の重さ(200ml)≒2N(約200g)
大気圧が水の重さの約500倍以上の力で押し上げているため、水がこぼれないのです。
実験③:トリチェリの実験(気圧計の原理)
これは高校物理でも学ぶ有名な実験で、17世紀のイタリアの物理学者エヴァンジェリスタ・トリチェリが考案したものです。
水銀を満たしたガラス管を水銀の入った容器に逆さまに立てると、管の中の水銀柱はある高さで止まります。その高さが約76cm(760mm)であり、これが大気圧と釣り合う水銀柱の高さ=760mmHgです。
水銀は危険な物質のため自宅での再現は難しいですが、水を使った代替実験(水柱は約10.3mになる)で同様の原理を確認することができます。理科の授業や科学館での展示でよく取り上げられる実験です。
| 実験名 | 難易度 | 確認できること | 必要なもの |
|---|---|---|---|
| ペットボトル圧縮 | ★☆☆ | 大気圧で物がつぶれる | ペットボトル・お湯 |
| 逆さコップ | ★☆☆ | 大気圧が水を支える力 | コップ・水・紙 |
| トリチェリの実験 | ★★★ | 大気圧の数値的測定 | 水銀・ガラス管(要注意) |
まとめ
この記事では、「大気圧とは?気圧の違いや単位や実験を簡単に解説!【1気圧:公式や計算方法も】」と題し、大気圧の基礎から応用まで幅広く解説しました。
大気圧とは、大気の重さによって生じる圧力であり、私たちの体に常に四方から約1気圧(101,325Pa)の力が加わっています。
気圧と大気圧の違いは微妙ながらも重要であり、単位もPa・hPa・atm・mmHgとさまざまな種類が存在します。特に1気圧=1013.25 hPa=760 mmHgという換算関係は、試験でも頻出です。
圧力の基本公式「P=F÷S」とトリチェリの実験を理解することで、1気圧の具体的な数値がどのように導かれるかも把握できたのではないでしょうか。
また、ペットボトル実験や逆さコップなど、身近な材料でできる実験を通じて、目に見えない大気圧の力を感覚的に体験してみることも大切です。
大気圧は物理・化学・地学・気象と幅広い分野に関わる重要概念です。この記事が、大気圧への理解を深めるきっかけになれば幸いです。