Excelで名簿や住所録を作成していると、漢字のデータをあいうえお順(五十音順)に並べ替えたい場面が頻繁にあります。
顧客リストや社員名簿、商品名一覧などを五十音順に整理すれば、目的のデータを素早く見つけられるようになり、データ管理の効率が大幅に向上します。
Excelの並べ替え機能を使えば、クリック一つで簡単にソートできるはずですが、漢字のデータを並べ替えると、あいうえお順にならずに意図しない順序になってしまうことがあります。
「佐藤」「鈴木」「高橋」「田中」という名前を五十音順に並べれば「佐藤」「鈴木」「高橋」「田中」となるはずですが、実際には「高橋」「佐藤」「田中」「鈴木」のように、まったく違う順序で表示されてしまうのです。
この現象の原因は、Excelが漢字を並べ替える際に使用する「ふりがな情報」にあります。
Excelは漢字そのものではなく、セルに保存されているふりがな情報を基準にして並べ替えを行うため、このふりがな情報が正しくないと、五十音順にならないのです。
本記事では、Excelで漢字があいうえお順にならない原因を詳しく解説し、ふりがな情報の確認方法や修正方法、PHONETIC関数の活用法を紹介します。
コピー&ペーストしたデータや外部から取り込んだデータでも、確実に五十音順に並べ替える方法を習得できます。
ポイントは
・漢字の並び替えはふりがな情報を基準にしている
・ふりがなの表示と編集で正しい読みに修正可能
・PHONETIC関数で別セルにふりがなを抽出して確認できる
です。
それでは詳しく見ていきましょう。
漢字があいうえお順にならない原因
それではまず、Excelで漢字を並べ替えたときに五十音順にならない根本的な原因を確認していきます。
ふりがな情報とは何か
Excelで漢字のセルを作成すると、セルには見えない「ふりがな情報」が自動的に保存されます。
セルに「田中」と入力する際、実際には「たなか」と入力してから変換して「田中」にしているはずです。この入力過程で、Excelは「田中」という漢字だけでなく、「たなか」という読み情報も一緒にセルに保存しています。
このふりがな情報は通常の表示では見えませんが、セルの内部データとして確実に保持されており、並べ替え時の基準として使用されます。
Excelの並べ替え機能で昇順を選択すると、漢字そのものの文字コードではなく、このふりがな情報を基準にあいうえお順で並べ替えが行われるのです。
例えば、「佐藤」というセルには「さとう」、「鈴木」には「すずき」というふりがな情報が保存されており、これらを五十音順に並べると「さとう」「すずき」の順になるため、「佐藤」「鈴木」という正しい順序で表示されます。
ふりがな情報が不正確になるケース
ふりがな情報が正しくない状態になる最も一般的なケースは、他のファイルやシステムからコピー&ペーストしたデータを使用する場合です。
WebサイトからコピーしたデータやPDFから抽出したテキスト、他のアプリケーションで作成されたCSVファイルなどをExcelに貼り付けると、漢字はそのまま表示されますが、ふりがな情報は正しく保存されません。
外部からコピーされたデータには、そもそもふりがな情報が含まれていないか、含まれていても正しくない情報になっている場合があります。
また、Excel内で作成したデータでも、セルを直接編集して漢字を変更した場合、ふりがな情報が更新されずに古い読みのまま残ってしまうことがあります。
例えば、「田中」と入力したセルを後から「中田」に書き換えた場合、表示は「中田」になりますが、ふりがな情報は「たなか」のまま残ります。この状態で並べ替えを行うと、「中田」が「た」行に分類されてしまい、正しい五十音順にならないのです。
同姓同名でも読み方が異なる場合(例:「高橋」を「たかはし」と読む人と「たかばし」と読む人)、ふりがな情報が異なれば並び順も変わります。
意図した順序にするには、ふりがな情報を統一する必要があります。
| データの入力方法 | ふりがな情報 | 並び替え結果 | 備考 |
|---|---|---|---|
| Excel内で直接入力 | 正しく保存される | 正常に五十音順 | 入力時の読みが記録される |
| Webからコピー貼り付け | 保存されない | 順序が不正確 | 文字コード順になる |
| CSVファイル読み込み | 保存されない | 順序が不正確 | 外部データにふりがななし |
| セル内容を後から変更 | 更新されない | 古い読みで並ぶ | ふりがな編集が必要 |
並べ替えオプションの設定
並べ替え時の設定によっても、結果が変わることがあります。
Excelの並べ替え機能には、「ふりがなを使う」というオプション設定があり、これがオフになっていると、ふりがなではなく文字コード順で並べ替えが行われます。
通常はこのオプションが自動的にオンになっているため、日本語環境では問題なくふりがな順で並べ替えられますが、何らかの理由でオフになっている場合は、五十音順にならない可能性があります。
並べ替えダイアログの「オプション」ボタンをクリックすると、「ふりがなを使う」というチェックボックスがあります。ここにチェックが入っていることを確認してください。
ふりがな情報を確認する方法
続いては、セルに保存されているふりがな情報がどうなっているかを確認する方法を見ていきます。
ふりがなの表示機能を使う
最も簡単な確認方法は、「ふりがなの表示」機能を使ってセルの上にふりがなを表示させることです。
確認したいセルまたはセル範囲を選択し、「ホーム」タブの「フォント」グループにある「ふりがなの表示/非表示」ボタン(あ亜のアイコン)をクリックします。
このボタンをクリックすると、選択したセルの漢字の上に小さな文字でふりがなが表示されます。ここに表示されるふりがなが、Excelが並べ替え時に使用している実際の読み情報です。
表示されたふりがなが正しくない場合、そのセルは正しい五十音順に並べ替えられない原因となります。
例えば、「中田」という漢字の上に「たなか」というふりがなが表示されていれば、ふりがな情報が間違っていることが一目でわかります。
| 表示される漢字 | 表示されるふりがな | 状態 | 並べ替え時の扱い |
|---|---|---|---|
| 田中 | たなか | 正常 | 「た」行に分類 |
| 中田 | たなか | 異常 | 「た」行に誤分類 |
| 鈴木 | (表示なし) | ふりがな情報なし | 文字コード順 |
| 高橋 | たかはし | 正常 | 「た」行に分類 |
PHONETIC関数でふりがなを取り出す
もう一つの確認方法として、PHONETIC関数を使って別のセルにふりがな情報を抽出する方法があります。
PHONETIC関数は「=PHONETIC(セル参照)」という形式で使用し、指定したセルに保存されているふりがな情報を文字列として返します。
例えば、A1セルに「田中」と入力されている場合、B1セルに「=PHONETIC(A1)」と入力すると、B1セルには「たなか」という文字列が表示されます。
この関数を使えば、大量のデータのふりがな情報を一括で確認できるため、どのセルのふりがなが間違っているかを効率的に特定できます。
A列に名前が入力されているリストがある場合、B列にPHONETIC関数を入力してオートフィルでコピーすれば、すべての名前のふりがなを一覧表示できます。
=PHONETIC(A1)
この数式をB1セルに入力し、下方向にコピーすることで、A列の全データのふりがな情報を確認できます。
ふりがな情報が保存されていないセルの場合、PHONETIC関数は元の漢字をそのまま返します。
ふりがなが正しいかどうかは、PHONETIC関数で抽出した結果を目視で確認するか、期待される読みと比較する別の列を用意して照合します。
並べ替え結果から推測する方法
実際に並べ替えを実行して、結果の順序から間違っているふりがなを推測することもできます。
データを昇順で並べ替えた後、明らかに五十音順から外れているデータを探します。例えば、「さ」行の中に「た」行の名前が混ざっている場合、そのセルのふりがなが間違っている可能性が高いです。
ただし、この方法は小規模なデータセットには有効ですが、数百件、数千件のデータがある場合は、すべての誤りを目視で見つけるのは現実的ではありません。
大量のデータの場合は、PHONETIC関数を使った一括確認の方が効率的です。
ふりがな情報を修正する方法
続いては、間違っているふりがな情報を正しく修正する具体的な方法を確認していきます。
ふりがなの編集機能を使う
個別のセルのふりがなを修正する場合は、「ふりがなの編集」機能を使用します。
修正したいセルを選択し、「ホーム」タブの「ふりがなの表示/非表示」ボタンの横にある下向き矢印をクリックして、「ふりがなの編集」を選択します。
この操作により、セル内の漢字の上にふりがなが表示され、カーソルがふりがな部分に移動して編集可能な状態になります。
キーボードでふりがなを直接修正し、正しい読みに変更します。修正が完了したらEnterキーを押して確定します。
例えば、「中田」というセルのふりがなが「たなか」になっている場合、ふりがなの編集モードに入り、「たなか」を「なかた」に書き換えてEnterを押せば、ふりがな情報が正しく更新されます。
| 操作 | 手順 | 効果 |
|---|---|---|
| ふりがな編集開始 | ホーム→ふりがな→編集 | 編集モードに入る |
| ふりがな修正 | キーボードで入力 | 読みを変更 |
| 修正確定 | Enterキー | 新しいふりがな保存 |
| 一括編集 | 複数セル選択→編集 | 範囲内を順次編集 |
セルを再入力してふりがなを再生成
ふりがな情報が完全に欠落している場合や、編集が面倒な場合は、セルの内容を削除して再入力することで、正しいふりがな情報を新たに生成できます。
セルを選択してDeleteキーで内容を削除し、改めて日本語入力モードで正しい読みを入力してから変換して漢字にします。
この方法では、入力時の読みが自動的にふりがな情報として保存されるため、確実に正しいふりがなが設定されます。
ただし、大量のデータがある場合、すべてを手動で再入力するのは非効率です。少数のセルだけが問題の場合や、どうしても正確なふりがなが必要な場合に有効な方法です。
ふりがなの一括設定機能
複数のセルのふりがなをまとめて設定し直したい場合は、「ふりがなの設定」ダイアログから一括変更できます。
対象となるセル範囲を選択し、「ホーム」タブの「ふりがなの表示/非表示」ボタンの横の下向き矢印をクリックして、「ふりがなの設定」を選択します。
「ふりがな」タブでは、ふりがなの種類(ひらがな、カタカナ、半角カタカナ)や配置を設定できます。「ふりがな情報の修正」欄では、ふりがなをどのように決定するかを選択できます。
ただし、この機能では個々のセルのふりがな内容を直接編集することはできず、主に表示形式の変更に使用されます。実際のふりがなの内容を変更するには、前述の「ふりがなの編集」を使う必要があります。
ふりがなの種類を「ひらがな」から「カタカナ」に変更すると、すべてのふりがながカタカナ表記に変換されます。
ただし、これは表示方法の変更であり、並べ替えの順序には影響しません。
外部データでも五十音順に並べる方法
続いては、CSVファイルやWebサイトから取り込んだデータなど、ふりがな情報がないデータを五十音順に並べる方法を確認していきます。
別列に読みデータを用意する
外部から取り込んだデータにはふりがな情報が含まれないため、別の列に読み仮名を手動で入力するか、元データに含まれている読み情報を活用します。
多くのデータベースやシステムでは、漢字の列とは別に「読み」や「フリガナ」という列が用意されていることがあります。このような読み列が存在する場合、その列を基準にして並べ替えを行えば、正確な五十音順が実現できます。
並べ替えダイアログで「最優先されるキー」を読み列に設定し、昇順で並べ替えを実行します。これにより、読み列の五十音順でデータ全体が並べ替えられます。
読み列がない場合は、新しい列を追加して手動で読み仮名を入力する必要があります。件数が少なければ手入力でも対応可能ですが、大量のデータの場合は効率的ではありません。
| A列(氏名) | B列(読み) | 並べ替え基準 | 結果 |
|---|---|---|---|
| 田中太郎 | たなかたろう | B列昇順 | 正しい五十音順 |
| 佐藤花子 | さとうはなこ | B列昇順 | 正しい五十音順 |
| 鈴木一郎 | すずきいちろう | B列昇順 | 正しい五十音順 |
ふりがなを自動付与するツールの活用
外部データに対してふりがなを自動的に付与したい場合、VBAマクロや外部ツールを使用する方法があります。
Excel VBAを使えば、選択した範囲のセルに対して、セルの内容をいったんコピーして再入力することで、ふりがな情報を強制的に付与するマクロを作成できます。
ただし、このマクロは漢字の正しい読みを推測できないため、同音異字(「高橋」を「たかはし」か「たかばし」かなど)の判別はできません。元のデータに読み情報が含まれていない場合、完全に自動化することは困難です。
一部の外部アドインやWebサービスでは、漢字から読みを自動生成する機能を提供していますが、人名の場合は特に誤変換が多いため、最終的には目視での確認と手動修正が必要になります。
並べ替えの詳細設定を活用
複雑な並べ替えが必要な場合は、並べ替えダイアログの詳細設定を使って複数の条件を組み合わせます。
「データ」タブの「並べ替え」ボタンをクリックすると、詳細な並べ替えダイアログが開きます。
ここでは、第1キー、第2キー、第3キーと複数の並べ替え基準を設定できます。例えば、第1キーを「読み」列、第2キーを「氏名」列に設定すれば、まず読み仮名で並べ替え、同じ読みの場合は漢字の文字コード順で並べ替えるという動作になります。
「オプション」ボタンから「大文字と小文字を区別する」や「ふりがなを使う」などの設定も調整できます。日本語データの場合、「ふりがなを使う」が有効になっていることを必ず確認してください。
並べ替えの実行前には、必ずデータのバックアップを取るか、別のシートにコピーしてから作業することをおすすめします。
並べ替え後に元の順序に戻したい場合、連番列を追加しておくと、その列で並べ替えることで元の順序を復元できます。
まとめ エクセルであいうえお順に漢字がならない(ふりがな設定)対処法
エクセルで漢字があいうえお順にならない問題の対処法をまとめると
・漢字の並べ替えはセルに保存されたふりがな情報を基準にしている、外部データやコピー貼り付けではふりがな情報が欠落または不正確
・ふりがなの表示機能で読みを確認、PHONETIC関数で別セルに抽出して一括確認も可能
・ふりがなの編集機能で個別に修正、セルを削除して再入力することで正しいふりがなを再生成
・外部データは別列に読み情報を用意して並べ替え、読み列を基準キーに設定
これらの方法を理解すれば、どのようなデータでも確実に五十音順で並べ替えることができます。
最も重要なのは、並べ替えがうまくいかない原因がふりがな情報にあることを理解することです。
表示されている漢字だけを見ても問題は解決せず、見えない部分に保存されているふりがな情報を確認し、必要に応じて修正する必要があります。
ふりがなの表示機能やPHONETIC関数を活用すれば、どのセルのふりがなが間違っているかを効率的に特定できます。
ただし、大量の外部データを扱う場合は注意が必要です。
CSVファイルやデータベースから取り込んだデータには、最初からふりがな情報が含まれていないため、元データに読み列が用意されているかを確認し、ない場合は手動での追加や修正が必要になります。
また、人名の場合は同じ漢字でも読み方が複数存在するため、自動判定に頼らず、正確な読みを確認してから設定することが重要です。
Excelのふりがな機能を正しく理解して活用すれば、名簿や顧客リストの管理がより効率的になります。五十音順の並べ替えをマスターして、データ整理作業の生産性を向上させていきましょう!