エクセルで作成した大きな表を印刷しようとしたとき、意図しない場所でページが切れてしまい、見づらい印刷結果になった経験はないでしょうか。
特に複数ページにわたる資料では、適切な位置でページを区切らないと、項目が分断されて読みにくくなる問題が発生します。顧客に提出する見積書や、会議で配布する集計表が途中で切れていると、プロフェッショナルな印象を損ねてしまうでしょう。
エクセルには改ページという機能があり、印刷時のページ区切り位置を自由にコントロールできます。手動で改ページを挿入すれば、見出し行の直前で改ページしたり、関連データをまとめて1ページに収めたりすることが可能です。
本記事では、改ページの基本的な挿入方法から、一括削除のテクニック、さらには印刷タイトルとの組み合わせまで、印刷レイアウトを完璧に整えるための知識を詳しく解説します。きれいに印刷された資料を作成したい方は、ぜひ最後までお読みください。
ポイントは
・改ページプレビューで視覚的に確認しながら設定
・「すべての改ページを解除」で一括削除が可能
・印刷タイトルと組み合わせて見やすい資料を作成
です。
それでは詳しく見ていきましょう。
エクセルの改ページを理解して一括設定の準備をする
それではまず改ページの基本知識と、一括設定に便利な改ページプレビューについて解説していきます。
改ページとは何か
改ページとは、エクセルのワークシートを印刷する際に、どこでページを区切るかを指定する機能です。
通常、エクセルは用紙サイズや余白設定に基づいて自動的にページを区切ります。しかし、自動で設定された改ページ位置が必ずしも最適とは限りません。
例えば、カテゴリーの見出し行とデータ行が別々のページに分かれてしまったり、関連する複数行が途中で切れてしまったりすることがあるでしょう。
手動で改ページを挿入することで、こうした問題を解決できます。改ページには「自動改ページ」と「手動改ページ」の2種類があります。自動改ページはエクセルが自動的に挿入するもので点線で表示され、手動改ページはユーザーが明示的に挿入したもので実線で表示されるため、視覚的に区別できるでしょう。
手動改ページは自動改ページよりも優先されるため、手動で指定した位置では必ずページが区切られます。この仕組みを理解しておくと、複雑な表のレイアウト調整がスムーズに行えるはずです。
改ページプレビューで全体を俯瞰する
改ページを効果的に管理するには、改ページプレビューモードに切り替えることが最も便利です。
改ページプレビューは、ワークシート全体を俯瞰しながら、どこでページが区切られるかを視覚的に確認できる表示モードです。通常の表示モードでは改ページ位置が分かりにくいですが、このモードでは青い実線と点線でページ境界が明確に表示されます。
改ページプレビューに切り替えるには、画面右下のステータスバーにある表示切替ボタンを使用します。右から2番目のアイコン(ページが複数枚重なったようなデザイン)をクリックすると、改ページプレビューモードに切り替わるでしょう。あるいは「表示」タブの「ブックの表示」グループから「改ページプレビュー」を選択する方法もあります。
※画像挿入位置:改ページプレビューモードの画面全体を示すスクリーンショット
改ページプレビューでは、各ページの右上に「ページ1」「ページ2」といったページ番号が表示されます。青い実線が手動改ページ、青い点線が自動改ページを示しており、この線をドラッグすることで改ページ位置を直感的に調整できます。作業が終わったら、左端のアイコン(標準表示)をクリックして通常モードに戻してください。
この改ページプレビューモードを使えば、複数の改ページ位置を視覚的に確認しながら、ドラッグ操作だけで一括調整できるため、大量の改ページ設定でも短時間で完了します。初めて改ページを設定する場合は、必ずこのモードに切り替えて作業することをおすすめします。
改ページプレビューモードは、印刷レイアウトを確認しながら作業できる非常に便利な機能です。
どこでページが切れるのかを一目で把握でき、調整も直感的に行えるため、作業効率が格段に向上します。青い点線をドラッグすると実線に変わり、手動改ページとして固定される仕組みを覚えておきましょう。
改ページを手動で挿入する基本手順
続いては改ページを手動で挿入する具体的な方法を確認していきます。
行に改ページを挿入する方法
最も一般的な改ページの挿入方法は、特定の行の上に水平の改ページを挿入する手順です。
例えば10行目の上でページを区切りたい場合、まず10行目の任意のセル(例えばA10)を選択してください。選択したセルの上に改ページが挿入されるため、区切りたい位置の直下の行を選択することが重要です。セルを選択したら、「ページレイアウト」タブをクリックし、「ページ設定」グループ内の「改ページ」ボタンを探します。
「改ページ」ボタンをクリックすると、ドロップダウンメニューが表示されます。ここで「改ページの挿入」を選択すると、選択したセルの上に水平線の改ページが挿入されるでしょう。改ページプレビューで確認すると、青い実線が表示され、その上下でページが分かれていることが分かります。
※画像挿入位置:「ページレイアウト」タブの「改ページ」メニューを示すスクリーンショット
| 操作 | 選択するセル | 結果 |
|---|---|---|
| 10行目の上で改ページ | A10(10行目のいずれかのセル) | 9行目と10行目の間に改ページ |
| 見出し行の下で改ページ | 見出し行の次の行 | 見出しとデータが別ページに |
| カテゴリーごとに改ページ | 各カテゴリーの開始行 | カテゴリー単位でページ分割 |
この方法で、データの区切りごとに改ページを挿入すれば、印刷時に見やすい資料が作成できます。月ごとのデータをまとめた表であれば、各月の開始行で改ページを入れることで、1ページに1ヶ月分のデータを収められるでしょう。
列に改ページを挿入する方法
横に長い表の場合、垂直方向に改ページを挿入して、列単位でページを分けることもできます。
列の改ページを挿入する手順は、行の場合とほぼ同じです。改ページを入れたい列の直前のセルを選択してください。例えばD列の左側に改ページを入れたい場合は、D列のいずれかのセル(例えばD1)を選択します。その後、「ページレイアウト」タブの「改ページ」から「改ページの挿入」を選択すれば、選択した列の左側に垂直の改ページが挿入されるでしょう。
ただし、セルの位置によって挿入される改ページの種類が変わる点に注意が必要です。例えばD10セルを選択して改ページを挿入すると、D列の左側(垂直)と10行目の上(水平)の両方に改ページが挿入されます。列のみに改ページを入れたい場合は、必ず1行目のセルを選択してください。
横長の表で、四半期ごとや項目グループごとに列を区切りたい場合に、この垂直改ページが非常に有効です。月次レポートで各月のデータが横に並んでいる場合、3ヶ月ごとに改ページを入れれば、四半期単位で印刷できるようになります。
改ページプレビューでドラッグ調整する
大きな表で複数箇所に改ページを挿入する必要がある場合、改ページプレビューモードでのドラッグ操作が最も効率的です。
改ページプレビューモードでは、青い点線(自動改ページ)をマウスでドラッグすることで、手動改ページに変換できます。点線をドラッグすると実線に変わり、その位置で固定されるのです。複数の改ページ位置を視覚的に確認しながら、ドラッグ操作だけで調整できるため、10箇所、20箇所の改ページ設定でも短時間で完了するでしょう。
また、規則的なパターンで改ページを入れる場合は、最初の1箇所だけ手動で挿入し、残りは改ページプレビューで微調整する方法も効果的です。例えば20行ごとに改ページを入れたい場合、21行目に最初の改ページを挿入すれば、以降の自動改ページもおおよそ20行間隔で配置されます。その後、改ページプレビューで各位置を微調整すれば、効率的に作業が進められるはずです。
改ページを挿入する際は、必ず改ページプレビューモードで結果を確認することをおすすめします。
標準表示モードでは改ページの位置が分かりにくく、意図した通りに設定できたか判断しづらいためです。改ページプレビューなら、各ページにどのデータが含まれるか一目で分かるため、調整も容易になります。
改ページを一括削除・解除する方法
続いては設定した改ページを削除する方法を確認していきます。
すべての手動改ページを一括削除する手順
複数の改ページを設定した後、すべての手動改ページを一度に削除したい場合があります。
最も簡単な方法は、「すべての改ページを解除」機能を使うことです。まずワークシート内のいずれかのセル(A1セルなど)を選択してください。次に「ページレイアウト」タブの「改ページ」ボタンをクリックし、表示されるメニューから「すべての改ページを解除」を選択します。
この操作により、ワークシート内のすべての手動改ページが一度に削除されます。青い実線で表示されていた改ページが消え、点線の自動改ページだけが残る状態になるでしょう。改ページプレビューで確認すると、手動改ページがすべて消えて、エクセルが自動的に計算した改ページ位置だけになっていることが分かります。
※画像挿入位置:「すべての改ページを解除」メニュー項目のスクリーンショット
| 操作 | 対象 | 結果 |
|---|---|---|
| すべての改ページを解除 | シート内の全手動改ページ | 自動改ページのみの状態に戻る |
| 改ページの削除 | 選択位置の改ページのみ | 特定の改ページだけ削除 |
| ドラッグで画面外に移動 | 改ページプレビューでの操作 | 視覚的に削除可能 |
注意点として、この操作で削除されるのは手動改ページだけで、自動改ページは削除されません。自動改ページは印刷設定に基づいて自動的に配置されるため、削除という概念がないのです。
特定の改ページだけを削除する方法
すべてではなく、特定の改ページだけを削除したい場合もあります。
個別の改ページを削除するには、削除したい改ページの直後のセルを選択してください。例えば10行目の上に入っている改ページを削除したい場合、10行目のいずれかのセル(A10など)を選択します。その状態で「ページレイアウト」タブの「改ページ」ボタンをクリックすると、メニューに「改ページの削除」という項目が表示されるはずです。
「改ページの削除」を選択すると、選択したセルの上または左にある改ページが削除されます。もし選択位置に改ページが存在しない場合、この項目はグレーアウトして選択できなくなるでしょう。
改ページプレビューモードでの削除も便利です。削除したい改ページの実線を画面外にドラッグすることで、その改ページを削除できます。視覚的に操作できるため、どの改ページを削除したか分かりやすく、複数の改ページを調整する際に効率的です。
改ページの削除作業は、Ctrl+Zキーで元に戻すことができます。
誤って必要な改ページを削除してしまった場合でも、すぐに取り消せるため安心です。ただし、「すべての改ページを解除」を実行した後は、複数の改ページが一度に削除されるため、重要なレイアウトの場合は事前にファイルをコピーしておくことをおすすめします。
改ページの効果的な活用テクニック
続いては改ページをより効果的に活用するための応用テクニックを確認していきます。
印刷タイトルと組み合わせて見やすい資料を作成
改ページと一緒に活用したいのが、印刷タイトル機能です。
印刷タイトルとは、複数ページにわたる表を印刷する際に、特定の行や列をすべてのページに繰り返し印刷する機能です。例えば1行目に列見出しがある表で、2ページ目以降にも見出し行を印刷したい場合に使用します。この機能と改ページを組み合わせると、各ページが独立した読みやすい資料になるでしょう。
印刷タイトルを設定するには、「ページレイアウト」タブの「ページ設定」グループから「印刷タイトル」ボタンをクリックしてください。「ページ設定」ダイアログボックスが開き、「シート」タブが表示されます。ここに「タイトル行」と「タイトル列」という設定項目があります。
「タイトル行」の入力欄をクリックし、繰り返し印刷したい行を選択してください。例えば「$1:$1」と入力すると、1行目がすべてのページに印刷されます。複数行を指定したい場合は「$1:$2」のように範囲で指定できます。
改ページで適切にページを分割し、印刷タイトルで見出しを各ページに配置すれば、ページをめくっても常に見出しが見える、非常に使いやすい資料が完成します。
会議資料や報告書など、複数ページにわたる表を印刷する際は必須のテクニックと言えるでしょう。
改ページが思い通りにならない場合の対処法
改ページを設定しても、印刷時に期待通りのレイアウトにならない場合があります。
よくあるトラブルとして、改ページを挿入したのに効果がないように見えるケースがあります。これは、列幅が広すぎて1ページに収まらない場合に発生します。エクセルは1ページに収まらない列を自動的に次のページに送るため、行の改ページだけでは制御できないのです。この場合は、列幅を調整するか、印刷の向きを縦から横に変更する必要があるでしょう。
また、非表示の行や列がある場合、改ページの位置が分かりにくくなることがあります。非表示の行も改ページ計算には含まれるため、見た目と実際の印刷結果が異なる可能性があります。改ページ設定前に、すべての行と列を表示しておくことをおすすめします。
印刷プレビューで確認することも重要です。改ページプレビューは編集画面上での表示ですが、実際の印刷結果とは若干異なる場合があります。「ファイル」タブから「印刷」を選択し、印刷プレビュー画面で最終的なレイアウトを確認してから印刷するようにしましょう。
ページ設定の各種パラメータも改ページ位置に影響します。用紙サイズ、印刷の向き、余白、拡大縮小率などを変更すると、自動改ページの位置が再計算されます。最適な印刷レイアウトを作成するには、まずページ設定を決定し、その後で改ページを調整する順序が推奨されます。
改ページ設定は、一度設定すれば終わりではありません。
データが追加されたり、列が増えたりすると、改ページ位置を再調整する必要が出てきます。定期的に印刷する資料の場合は、データ更新後に必ず改ページプレビューで確認し、必要に応じて調整する習慣をつけると良いでしょう。
まとめ エクセルで改ページを一括設定する方法(印刷範囲の区切りと解除)
エクセルで改ページを一括設定する方法をまとめると、最も効率的なのは改ページプレビューモードを活用することです。このモードでは青い点線をドラッグして手動改ページに変換できるため、複数箇所の改ページを視覚的に確認しながら素早く設定できます。
手動での改ページ挿入は、「ページレイアウト」タブの「改ページ」から「改ページの挿入」を選択する方法が基本です。選択したセルの上または左に改ページが入るため、区切りたい位置の直下または直右のセルを選択してください。削除する場合は「すべての改ページを解除」で一括削除が可能です。
改ページの効果を最大化するには、印刷タイトル機能との組み合わせが重要です。見出し行を各ページに繰り返し印刷することで、どのページを見ても内容が理解できる資料になります。また、ページ設定を先に決定してから改ページを調整する順序を守ることで、手戻りを防げるでしょう。
改ページは印刷資料の見やすさを大きく左右する重要な機能です。
適切な位置でページを区切ることで、プロフェッショナルな印象の資料を作成できます。本記事で紹介した方法を活用し、読みやすく整った印刷レイアウトを実現していきましょう!