Excelで数値データを扱う際、下3桁を削除して千円単位や千個単位で表示したい場面は頻繁に訪れます。
売上報告書や予算資料では、細かい桁まで表示すると数字が読みにくくなるため、千円単位や百万円単位で丸めて表示することが一般的です。
例えば、「1,234,567円」という数値を「1,235千円」と表示したり、「123,456個」を「123千個」と表示したりすることで、資料全体の見やすさが大きく向上します。
しかし、下3桁を削除する方法は複数あり、それぞれに特徴があります。関数を使って実際の数値を変更する方法、表示形式を変えて見た目だけを変更する方法、文字列として処理する方法など、目的に応じて最適な手法を選択する必要があります。
Excelには下3桁を削除するための様々な方法が用意されています。
INT関数を使った簡単な割り算による方法、ROUNDDOWN関数を使った正確な切り捨て処理、表示形式のユーザー定義を使った元データを保持したままの表示変更など、それぞれにメリットとデメリットがあります。
本記事では、下3桁を削除する具体的な方法を詳しく解説します。
基本的な関数の使い方から、四捨五入を伴う削除方法、表示形式を使った実務的なテクニック、文字列として下3桁だけを取り出す方法まで、実務で役立つ情報を網羅的に紹介しますので、データの見やすさを向上させたい方はぜひ最後までお読みください。
ポイントは
・INT関数で1000で割れば下3桁を切り捨てて削除できる
・ROUNDDOWN関数なら桁数指定で正確に切り捨て可能
・表示形式なら元データを保持したまま千円単位で表示できる
です。
それでは詳しく見ていきましょう。
INT関数で下3桁を切り捨てる基本的な方法
まずは、最もシンプルで分かりやすいINT関数を使った下3桁の削除方法を確認していきます。
INT関数による1000での割り算
下3桁を削除する最も基本的な方法は、INT関数と割り算を組み合わせた「=INT(A1/1000)」という数式です。
INT関数は、指定した数値の小数点以下を切り捨てて整数にする関数です。
例えば、A1セルに「123456」という数値が入っている場合、B1セルに「=INT(A1/1000)」と入力すると、まず123456÷1000で「123.456」という小数になり、その小数点以下が切り捨てられて「123」という結果になります。
この方法の利点は、数式が非常にシンプルで理解しやすいことです。
1000で割ることで下3桁が小数部分に移動し、INT関数でその小数部分を切り捨てるという仕組みが直感的に分かります。
逆に元の数値に戻したい場合は、結果に1000を掛ければよいので、検算も簡単です。
=INT(A1/1000)
例:123456 → 123
:987654 → 987
:1234567 → 1234
下1桁を削除したい場合は10で割り、下2桁を削除したい場合は100で割ります。
同様に、下4桁を削除したい場合は10000で割ればよいので、削除したい桁数に応じて割る数を調整できます。
この方法は非常に汎用性が高く、様々な桁数の削除に対応できます。
INT関数使用時の注意点
INT関数を使う際に注意すべき点は、負の数値に対する動作が特殊であることです。
INT関数は、数値を「最も近い小さい整数」に切り捨てます。
正の数の場合は問題ありませんが、負の数の場合、「-123.456」をINT関数で処理すると「-124」になります。
これは、-123.456よりも小さい最も近い整数が-124だからです。
通常、下3桁を削除する際に期待する結果は「-123」ですが、INT関数では「-124」になってしまうため、負の数値を扱う場合は後述するROUNDDOWN関数やTRUNC関数の使用を検討する必要があります。
ただし、売上や在庫数など、負の数値が登場しないデータを扱う場合は、この問題は気にする必要がありません。
| 元の数値(A列) | =INT(A1/1000) | 結果 | 説明 |
|---|---|---|---|
| 123456 | =INT(123456/1000) | 123 | 正の数は期待通りの結果 |
| 987654 | =INT(987654/1000) | 987 | 下3桁が削除される |
| -123456 | =INT(-123456/1000) | -124 | 負の数は小さい方に丸められる |
| 500 | =INT(500/1000) | 0 | 1000未満は0になる |
INT関数の結果を元の単位に戻して表示
INT関数で下3桁を削除した後、結果に「千円」や「千個」という単位を付けて表示したい場合があります。
数式の後ろに文字列を結合する「&」演算子を使えば、単位付きで表示できます。
例えば、「=INT(A1/1000)&”千円”」という数式を入力すると、「123千円」のように表示されます。
ただし、この方法で作成されたデータは文字列になってしまうため、そのまま計算に使用することはできません。
計算にも使用しつつ、表示上は単位を付けたい場合は、後述する表示形式を使った方法が適しています。
また、下3桁を削除した結果を千円単位で表示しながら、桁区切りのカンマも付けたい場合は、TEXT関数を組み合わせる方法もあります。
「=TEXT(INT(A1/1000),”#,##0″)&”千円”」とすれば、「1,234千円」のように桁区切り付きで表示されます。
ROUNDDOWN関数で正確に下3桁を切り捨てる
続いては、より正確で汎用性の高いROUNDDOWN関数を使った方法を確認していきます。
ROUNDDOWN関数の基本構文と使い方
ROUNDDOWN関数は、指定した桁数で数値を切り捨てる関数で、「=ROUNDDOWN(数値,桁数)」という構文で使用します。
第1引数には切り捨てたい数値またはセル参照を指定し、第2引数には桁数を指定します。
桁数の指定方法が重要で、小数点以下を切り捨てる場合は正の数を、整数部分を切り捨てる場合は負の数を指定します。
小数点の位置を「0」として、小数第1位は「1」、小数第2位は「2」となり、逆に10の位は「-1」、100の位は「-2」、1000の位は「-3」となります。
下3桁を削除したい場合、つまり1000未満を切り捨てたい場合は、桁数に「-3」を指定します。
例えば、「=ROUNDDOWN(123456,-3)」と入力すると、1000の位より下(100の位、10の位、1の位)が切り捨てられて「123000」になります。
=ROUNDDOWN(A1,-3)
例:123456 → 123000
:987654 → 987000
:1234567 → 1234000
さらに1000で割る場合:
=ROUNDDOWN(A1,-3)/1000
例:123456 → 123
:987654 → 987
ROUNDDOWN関数の結果は「123000」のように下3桁がゼロになった状態なので、表示上は下3桁を削除したように見えますが、実際には0が残っています。
完全に下3桁を削除して「123」のような数値にしたい場合は、ROUNDDOWN関数の結果をさらに1000で割ります。
「=ROUNDDOWN(A1,-3)/1000」とすれば、INT関数と同じような結果が得られます。
ROUNDDOWN関数とINT関数の違い
ROUNDDOWN関数とINT関数の大きな違いは、負の数値を処理する際の動作です。
ROUNDDOWN関数は、正の数でも負の数でも、数値の絶対値が小さくなる方向(0に近づく方向)に切り捨てます。
例えば、「-123456」をROUNDDOWN関数で処理すると「-123000」となり、さらに1000で割ると「-123」になります。
一方、INT関数で「-123456」を1000で割った結果は「-124」になるため、結果が異なります。
会計処理や在庫管理など、負の数値を扱う可能性がある場合は、ROUNDDOWN関数を使用する方が安全です。
また、ROUNDDOWN関数は桁数を自由に指定できるため、下3桁だけでなく、下4桁や下5桁の削除にも柔軟に対応できます。
| 元の数値 | INT関数 | ROUNDDOWN関数 | 違い |
|---|---|---|---|
| 123456 | =INT(123456/1000)→123 | =ROUNDDOWN(123456,-3)/1000→123 | 正の数は同じ結果 |
| -123456 | =INT(-123456/1000)→-124 | =ROUNDDOWN(-123456,-3)/1000→-123 | 負の数は結果が異なる |
| 123999 | =INT(123999/1000)→123 | =ROUNDDOWN(123999,-3)/1000→123 | 切り捨てなので同じ |
| -123999 | =INT(-123999/1000)→-124 | =ROUNDDOWN(-123999,-3)/1000→-123 | 負の数は1の差が出る |
四捨五入を伴う下3桁削除の方法
単純に下3桁を切り捨てるのではなく、四捨五入して下3桁を削除したい場合は、ROUND関数を使用します。
ROUND関数の構文は「=ROUND(数値,桁数)」で、ROUNDDOWN関数と同じように桁数を指定しますが、切り捨てではなく四捨五入されます。
例えば、「123456」という数値の下3桁を四捨五入で削除したい場合、「=ROUND(123456,-3)/1000」と入力すると「123」になります。
一方、「123678」の場合は下3桁が「678」なので、四捨五入により「124000」となり、1000で割ると「124」になります。
四捨五入を使うことで、より実際の数値に近い値で丸めることができるため、統計資料や報告書では四捨五入が好まれることが多いです。
逆に、常に大きめの数値にしたい場合(安全マージンを取りたい場合など)は、ROUNDUP関数を使って切り上げることもできます。
「=ROUNDUP(123456,-3)/1000」とすれば、下3桁が1でも存在すれば切り上げられて「124」になります。
表示形式で元データを保持したまま千円単位表示
続いては、実際の数値は変更せずに、見た目だけを変える表示形式を使った方法を確認していきます。
ユーザー定義の表示形式「#,##0,」の使い方
Excelの表示形式を使えば、元のデータを変更することなく、表示上だけを千円単位にすることができます。
この方法の最大のメリットは、セルに入力されている実際の値は元のまま保持されるため、計算に使用する際も正確な値が使われることです。
表示形式を設定するには、対象のセルを選択してCtrl+1キーを押し、「セルの書式設定」ダイアログを開きます。
「表示形式」タブで「ユーザー定義」を選択し、「種類」の欄に「#,##0,」と入力します。
この「#,##0,」という書式コードの意味は、桁区切りカンマ付きの数値として表示し、最後のカンマが「1000で割って表示する」という指示になります。
例えば、セルに「123456」と入力されていても、この書式を適用すると「123」と表示されます。
実際のセルの値は「123456」のまま変わっていないので、このセルを参照して計算する他の数式は、正しく「123456」として計算されます。
1. セルを選択してCtrl+1
2. 「表示形式」タブ→「ユーザー定義」
3. 種類の欄に「#,##0,」と入力
4. OKボタンをクリック
結果:123456 → 123と表示(実際の値は123456のまま)
さらに単位を付けて「123千円」と表示したい場合は、「#,##0,”千円”」と入力します。
ダブルクォーテーションで囲んだ文字列は、そのまま表示に追加されます。
「#,##0,”千個”」とすれば「123千個」、「#,##0,”K”」とすれば「123K」のように、任意の単位を付けることができます。
表示形式を使うメリットとデメリット
表示形式を使う最大のメリットは、元のデータの精度を失わないことです。
関数を使って下3桁を削除した場合、元の「123456」という正確な値は失われ、「123」という丸められた値だけが残ります。
しかし、表示形式を使えば、見た目は「123千円」でも、内部的には「123456」という正確な値が保持されているため、後から詳細な分析が必要になった場合でも対応できます。
また、表示形式は一度設定すれば、データを入力するだけで自動的に千円単位で表示されるため、数式をコピーする手間もかかりません。
デメリットとしては、表示と実際の値が異なるため、初心者には混乱を招く可能性があることです。
セルに「123」と表示されているのに、数式バーを見ると「123456」となっているため、慣れないうちは違和感を感じるかもしれません。
また、このセルの値をコピーして他のアプリケーション(メモ帳など)に貼り付けると、表示形式は反映されず「123456」がそのまま貼り付けられます。
| 書式コード | 実際の値 | 表示結果 | 説明 |
|---|---|---|---|
| #,##0, | 123456 | 123 | 千円単位で表示(単位なし) |
| #,##0,”千円” | 1234567 | 1,235千円 | 千円単位+単位表示+桁区切り |
| #,##0,,”百万円” | 123456789 | 123百万円 | 百万円単位で表示 |
| 0, | 500 | 1 | 桁区切りなし(四捨五入される) |
百万円単位や十億円単位での表示方法
千円単位だけでなく、さらに大きな単位で表示したい場合は、カンマの数を増やします。
「#,##0,,」とカンマを2つ並べると、1,000,000(100万)で割って表示されるため、百万円単位になります。
例えば、「123456789」という数値に対して「#,##0,,”百万円”」という書式を適用すると、「123百万円」と表示されます。
同様に、カンマを3つ並べた「#,##0,,,」とすれば、10億単位で表示されます。
大規模な予算資料や財務諸表など、非常に大きな金額を扱う場合に便利な機能です。
ただし、カンマが増えると書式コードが分かりにくくなるため、コメントを残しておくなど、後から見返したときに理解できるよう工夫することをおすすめします。
表示形式と関数、どちらを使うべきか迷った場合は、以下の基準で判断すると良いでしょう。
元のデータを後で詳細分析する可能性がある場合や、同じデータを別の単位でも表示する可能性がある場合は、表示形式を使用します。
一方、下3桁を削除した値そのものを別の計算で使用したい場合や、データをエクスポートして他のシステムで利用する場合は、関数を使って実際の値を変更する方が適しています。
また、同じファイル内で両方を併用することも可能です。
例えば、元データの列はそのまま保持し、表示用の列で関数を使って下3桁を削除した値を作成し、さらにその列に表示形式で「千円」という単位を付けるという方法もあります。
まとめ エクセルで下3桁を削除する方法
エクセルで下3桁を削除する方法をまとめると
・INT関数による方法:「=INT(A1/1000)」で下3桁を切り捨て削除、シンプルで理解しやすいが負の数値の扱いに注意、10で割れば下1桁、100で割れば下2桁も削除可能
・ROUNDDOWN関数による方法:「=ROUNDDOWN(A1,-3)/1000」で正確に切り捨て、負の数値も正しく処理される、桁数指定で柔軟に対応可能、四捨五入ならROUND関数、切り上げならROUNDUP関数を使用
・表示形式による方法:「#,##0,」で元データを保持したまま千円単位表示、「#,##0,”千円”」で単位付き表示、「#,##0,,」でカンマを増やせば百万円単位も可能、計算には元の正確な値が使用される
これらの方法を適切に使い分けることで、データの用途に応じた最適な処理ができます。
資料の見やすさを重視する場合は表示形式、データの加工や出力を重視する場合は関数を使用するのが基本です。
ただし、どの方法を使う場合でも、元のデータのバックアップを取っておくことが重要です。
特に関数を使って元データを上書きしてしまうと、後から正確な値が必要になった際に困ることがあります。
可能であれば、元データの列は残したまま、別の列に下3桁を削除した結果を表示する運用をおすすめします。
また、報告書や資料では、下3桁を削除したことを明記することも大切です。
表のタイトルに「(単位:千円)」と記載したり、注釈で「※千円未満切り捨て」と説明したりすることで、データを見る人が誤解しないようにしましょう。
Excelの下3桁削除テクニックを正しく理解して活用することで、見やすく正確なデータ資料を作成していきましょう!