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質量電荷比とは?質量分析での意味や計算を解説!(m/z・質量スペクトル・分子量など)

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「質量電荷比」という言葉を質量分析や化学の学習で目にしたことがある方も多いのではないでしょうか。

「m/zって何を表しているの?」「どうやって計算するの?」と疑問に思っている方もいることでしょう。

質量電荷比(m/z)は、質量分析における最も基本的かつ重要な物理量であり、分子量の決定・構造解析・化合物の同定に欠かせません。

本記事では、質量電荷比の定義・意味・単位から、質量分析での役割、質量スペクトルの読み方、具体的な計算方法まで丁寧に解説します。

化学・生化学・分析化学を学ぶ方にとって必須の知識ですので、ぜひ最後までご覧ください。

質量電荷比とは?定義と基本的な意味

それではまず、質量電荷比の定義と基本的な意味について解説していきます。

質量電荷比(m/z)の定義

質量電荷比とは、イオンの質量(m)をそのイオンの電荷数(z)で割った値のことです。

英語では「mass-to-charge ratio」と呼ばれ、記号は「m/z」で表されます。

質量分析(マス・スペクトロメトリー)において、イオン化された分子・原子・フラグメントはm/zに応じて分離・検出されます。

そのため、質量スペクトルの横軸にはm/zが使われており、スペクトルの解読にはm/zの意味を理解することが不可欠です。

質量電荷比(m/z)= イオンの質量(m)÷ イオンの電荷数(z)

m:イオンの質量(原子質量単位 u または Da)

z:電荷数(陽イオンの場合は正の整数)

m/zの単位

m/zの単位については厳密な議論があります。

本来は質量を電荷で割った値であるため、単位は「u/e(原子質量単位/素電荷)」または「Da/e(ダルトン/素電荷)」となりますが、実務・学術では慣例的に「無次元」として扱われることが多いです。

質量スペクトルの横軸も「m/z(単位なし)」として表示されることが一般的であり、z=1(1価イオン)の場合はm/zの数値が分子量にほぼ等しくなります

なぜ質量ではなくm/zで分離するのか

質量分析計では、電磁場を使ってイオンを分離します。

電磁場がイオンに与える力は電荷に比例し、イオンの運動はその質量と電荷の比(m/z)によって決まります。

したがって、電磁場によるイオンの軌道・飛行時間・共鳴周波数はすべてm/zに依存するため、質量分析ではm/zを基準として分離・検出が行われます。

この原理のため、同じ質量でも電荷が異なれば別のm/zとして検出されます。

質量分析におけるm/zの役割

続いては、質量分析における質量電荷比(m/z)の具体的な役割を確認していきます。

分子イオンピークとm/z

質量スペクトルに現れる「分子イオンピーク(M⁺ピーク)」は、分子全体がイオン化(電子1個失う)されたときに現れるピークです。

この場合z=1であるため、m/z=分子量となります。

分子イオンピークのm/z値を読み取ることで、その化合物の分子量を直接決定することができます。

ただし、EI(電子衝撃イオン化)など硬いイオン化法では分子イオンが不安定で検出されにくいことがあります。

フラグメントイオンとm/z

硬いイオン化法では分子が分解(フラグメンテーション)し、さまざまなフラグメントイオンが生じます。

それぞれのフラグメントイオンのm/z値は、分子の切断位置によって決まります。

ピークの種類 m/zの意味 用途
分子イオンピーク(M⁺) 分子量に等しい(z=1の場合) 分子量の決定
フラグメントイオンピーク 分解で生じた断片の質量/電荷 構造解析・官能基の推定
同位体ピーク(M+1, M+2) 重同位体を含むイオンのm/z 元素組成の推定
多価イオンピーク 質量を電荷数で割った値 タンパク質・高分子の分析

多価イオンとm/zの計算

タンパク質などの大分子では、ESI(エレクトロスプレーイオン化)により多価イオンが生じます。

たとえば、分子量10000の分子が10価のイオンになると、m/z=10000÷10=1000となります。

逆に、スペクトル上のm/zの値と電荷数から分子量を算出することが可能です。

分子量(M)= m/z × z(電荷数)

例)m/z=800、z=3(3価イオン)の場合

分子量 = 800 × 3 = 2400

質量スペクトルの読み方とm/zの解析

続いては、質量スペクトルの読み方とm/zを使った解析方法を確認していきます。

質量スペクトルの基本的な読み方

質量スペクトルは横軸にm/z、縦軸に相対強度(%)をとったグラフです。

最も強いピークを「基準ピーク(base peak)」とし、その強度を100%として他のピークの相対強度が表示されます。

スペクトルを読む際の基本的な手順は次のとおりです。

①最大のm/z値のピーク(分子イオンピーク候補)を探す

②分子イオンピークのm/z値から分子量を推定する

③フラグメントイオンピークのm/z値の差から失われた原子団を推定する

④同位体パターンから元素組成を推定する(Cl・Brの存在確認など)

フラグメントイオンのm/z差から構造を推定する

隣接するピークのm/z値の差から、失われた原子団を推定できます。

m/z差 失われた原子団 対応する基・元素
1 H(水素) 水素原子
15 CH₃(メチル基) アルキル化合物
17 OH(水酸基) アルコール・酸
18 H₂O(水) アルコール・カルボン酸
28 CO(カルボニル) アルデヒド・ケトン
29 CHO(ホルミル基) アルデヒド

同位体パターンを使った元素組成の推定

塩素(Cl)を含む化合物では、³⁵Clと³⁷Clの存在比(約3:1)により、M⁺とM+2ピークが約3:1で現れます。

臭素(Br)を含む場合は⁷⁹Brと⁸¹Brの存在比がほぼ1:1であるため、M⁺とM+2が約1:1の強度で現れます。

この特徴的な同位体パターンを活用することで、ハロゲンの有無と種類をm/zのパターンだけで判定することができます。

m/zの計算例と実践的な問題演習

続いては、m/zの計算例と実践的な問題演習を確認していきます。

1価イオンのm/z計算

【問題1】ベンゼン(C₆H₆、分子量78)が1価の陽イオンになった場合のm/zを求めよ。

【解答】

z = 1(1価イオン)

m/z = 78 ÷ 1 = 78

【問題2】グルコース(C₆H₁₂O₆、分子量180)がナトリウム付加イオン[M+Na]⁺として検出される場合のm/zを求めよ。

【解答】

Naの原子量:23

m = 180 + 23 = 203、z = 1

m/z = 203

多価イオンのm/z計算

【問題3】分子量5000のペプチドが5価の陽イオンとして検出された場合のm/zを求めよ。

【解答】

m/z = 5000 ÷ 5 = 1000

【問題4】質量スペクトルでm/z=600のピークが観測され、そのイオンが4価であることがわかった。このイオンの分子量を求めよ。

【解答】

分子量 = m/z × z = 600 × 4 = 2400

ESIスペクトルでの分子量決定

ESIで多価イオンが生じる場合、複数のm/z値から分子量を求める方法があります。

隣接する2つのピークのm/z値(m₁とm₂、電荷数z₁とz₂)から連立方程式を立てて分子量を計算します。

この手法は大学・研究レベルの質量分析で重要な解析技術であり、タンパク質・核酸などの高分子化合物の分子量決定に活用されています。

まとめ

本記事では、質量電荷比(m/z)の定義・意味・単位から、質量分析における役割、質量スペクトルの読み方、具体的な計算方法まで幅広く解説しました。

m/zとは「イオンの質量を電荷数で割った値」であり、質量スペクトルの横軸として分子量の決定・構造解析・化合物同定に使われます。

z=1の場合はm/zが分子量に等しくなりますが、多価イオンでは分子量=m/z×zとして求める必要があります。

フラグメントイオンのm/z差・同位体パターンなどを組み合わせることで、化合物の構造を詳細に推定することが可能です。

ぜひ本記事を参考に、質量電荷比(m/z)の概念と計算をしっかりと身につけてください。