「質量流量」という言葉を工学や化学の分野で耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。
配管・流体機械・化学プロセスの設計において、流体の流れを正確に管理するために質量流量は欠かせない概念です。
質量流量を正確に把握することは、化学プラントや食品製造・医薬品製造のプロセス管理において非常に重要な役割を果たしています。
本記事では、質量流量の定義・単位・求め方・公式から、体積流量との違いと換算方法、質量流量計の種類と仕組みまで丁寧に解説します。
工学・化学工学を学ぶ方や実務でご活用いただける内容ですので、ぜひ最後までご覧ください。
質量流量とは?定義と基本的な意味
それではまず、質量流量の定義と基本的な意味について解説していきます。
質量流量の定義
質量流量とは、単位時間あたりに流れる流体の質量を表す物理量です。
英語では「Mass Flow Rate」と呼ばれ、記号はṁ(mドット)で表されることが多いです。
たとえば、1秒間に10kgの流体がパイプを通過する場合、質量流量は10 kg/sとなります。
質量流量は温度・圧力の変化に影響されず、物質そのものの量を表すため、化学反応の物質収支・エネルギー収支の計算において特に重要です。
質量流量(ṁ)= 単位時間あたりに通過する流体の質量
単位:kg/s(SI単位)、kg/h(工業単位)、g/s など
質量流量の単位
質量流量の単位はさまざまなものが使われますが、SI単位系ではkg/s(キログラム毎秒)が基本単位です。
工業現場では「kg/h(キログラム毎時)」や「t/h(トン毎時)」が使われることも多く、分野によって使い慣れた単位が異なります。
| 単位 | 読み方 | 主な使用場面 |
|---|---|---|
| kg/s | キログラム毎秒 | SI単位・学術計算 |
| kg/h | キログラム毎時 | 工業プロセス・化学プラント |
| t/h | トン毎時 | 大規模プロセス・製鉄・製紙 |
| g/s | グラム毎秒 | 精密機器・医療・研究 |
| lb/s | ポンド毎秒 | アメリカ系工業規格 |
質量流量が重要な理由
質量流量が工学において特に重要な理由は、温度・圧力の変化に影響されない安定した物理量だからです。
体積流量(単位時間あたりの体積)は温度・圧力が変わると流体の体積が変化するため、値が変動してしまいます。
一方、質量流量は温度・圧力に依存しないため、プロセス管理や物質収支の計算において信頼性が高く、化学反応の反応率・変換率の計算にも適しています。
質量流量の求め方と公式
続いては、質量流量の具体的な求め方と公式を確認していきます。
基本公式
質量流量の基本公式は次のとおりです。
ṁ(kg/s)= ρ(kg/m³)× Q(m³/s)
ṁ:質量流量
ρ(ロー):流体の密度
Q:体積流量
また、流体の流速と流路断面積から求める場合は次のようになります。
ṁ(kg/s)= ρ(kg/m³)× A(m²)× v(m/s)
A:流路の断面積
v:流体の平均流速
この式は「連続の方程式」と呼ばれ、流体力学の基本方程式のひとつです。
体積流量から質量流量への換算
体積流量(Q)が与えられている場合、密度(ρ)をかけることで質量流量に換算できます。
【問題】密度800 kg/m³の油が0.05 m³/sで流れている。質量流量を求めよ。
【解答】
ṁ = 800 × 0.05 = 40 kg/s
換算の際には、密度の単位と体積流量の単位が対応しているかを確認しましょう。
密度がg/cm³で体積流量がL/sの場合は、単位を統一してから計算する必要があります。
質量流量と体積流量の比較
| 項目 | 質量流量 | 体積流量 |
|---|---|---|
| 定義 | 単位時間あたりの質量 | 単位時間あたりの体積 |
| SI単位 | kg/s | m³/s |
| 温度・圧力依存性 | なし | あり |
| 主な用途 | 物質収支・反応計算・プロセス管理 | 流量計測・配管設計・容量計算 |
| 換算 | 体積流量 × 密度 | 質量流量 ÷ 密度 |
質量流量計の種類と仕組み
続いては、質量流量を測定する「質量流量計」の種類と仕組みを確認していきます。
コリオリ式質量流量計
コリオリ式質量流量計は、コリオリの力(回転系における慣性力)を利用して質量流量を直接測定する装置です。
U字管やオメガ型などの振動する管に流体を流すと、質量流量に比例したコリオリの力が発生し、管のねじれ角度が変化します。
このねじれ角度を電気信号として計測することで質量流量を直接求めることができます。
精度が非常に高く(±0.1%以内)、密度の計測も同時にできるため、化学プラント・食品工業・石油精製などで広く使われています。
熱式質量流量計
熱式質量流量計は、加熱されたセンサーが流体によって冷却される度合いから質量流量を測定する方式です。
「熱伝導型」と「熱質量流量型(バイパス型)」の2種類があります。
ガス(気体)の流量測定に特化した機種が多く、半導体製造・ガス供給ライン・燃焼制御などで使われています。
電気使用量が少なく、圧力損失が小さいという特長があります。
差圧式・電磁式流量計との違い
差圧式流量計や電磁式流量計は体積流量を測定する装置であり、質量流量を求めるには別途密度の計測が必要です。
一方、コリオリ式や熱式は質量流量を直接測定するため、密度補正が不要で精度が高いというメリットがあります。
用途・コスト・精度要求に応じて適切な流量計を選定することが工学の実務において重要です。
質量流量の工学的応用
続いては、質量流量の工学的な応用場面を確認していきます。
化学プラントでの物質収支
化学プロセスでは、反応器に入る原料と出てくる生成物・未反応物の質量流量を正確に管理することが不可欠です。
物質収支(マスバランス)の式は次のとおりです。
入ってくる質量流量 = 出ていく質量流量 + 蓄積される質量流量
定常状態では:入ってくる質量流量 = 出ていく質量流量
このマスバランスの計算に質量流量が使われ、プロセスの効率評価・コスト計算・安全管理に直結します。
エネルギー収支との連携
熱交換器や反応器の設計では、エネルギー収支(エネルギーバランス)の計算にも質量流量が使われます。
熱量(W)= 質量流量(kg/s)× 比熱(J/kg·K)× 温度差(K)
例)水(比熱4186 J/kg·K)が2 kg/sで流れ、温度が10K上昇する場合
熱量 = 2 × 4186 × 10 = 83720 W(≒ 83.7 kW)
このように質量流量はエネルギー計算の基礎となる量でもあります。
航空・宇宙工学での応用
航空エンジン(ジェットエンジン)や宇宙ロケットの推力計算にも質量流量が使われます。
推力(N)= 質量流量(kg/s)× 噴出速度(m/s)という式から、エンジン性能を評価できます。
燃料の消費率(比燃料消費率)も質量流量を使って評価されるため、航空・宇宙工学においても質量流量は基本的な設計パラメータです。
まとめ
本記事では、質量流量の定義・単位・求め方・公式から、体積流量との換算、質量流量計の種類、工学的応用まで幅広く解説しました。
質量流量とは単位時間あたりに流れる流体の質量(単位:kg/s)であり、温度・圧力に依存しない安定した物理量です。
「ṁ=ρ×Q」という公式を使えば体積流量・密度から質量流量を求めることができます。
コリオリ式・熱式などの質量流量計を正しく選定・活用することが、化学プラントから航空工学まで幅広い分野でのプロセス管理の精度向上につながります。
ぜひ本記事を参考に、質量流量の概念と計算方法を確実に身につけてください。