Excelシートに大量の図形や画像が配置されていて、削除に困った経験はありませんか。
データをコピーした際に不要な図形まで一緒に貼り付いてしまったり、過去の資料から画像やボタンなどのオブジェクトが残っていて邪魔になるケースは頻繁に発生します。しかし、一つずつクリックして削除していくのは非常に手間がかかり、見落としも発生しやすいでしょう。
Excelには、シート上のすべてのオブジェクトを一括選択して削除する機能が用意されています。「検索と選択」からオブジェクトを選択する方法や、ショートカットキーを使う方法で、数十、数百のオブジェクトでも一瞬で削除できるのです。
本記事では、オブジェクトの一括選択・削除の基本操作から、特定の種類だけを選択する方法、VBAを使った高度な削除テクニックまで、実務ですぐに使える知識を詳しく解説します。シートの整理を効率化したい方は、ぜひ最後までお読みください。
ポイントは
・検索と選択機能でオブジェクトを一括選択
・Deleteキーで選択したオブジェクトを一気に削除
・種類別の選択やVBAで柔軟に対応
です。
それでは詳しく見ていきましょう。
検索と選択機能でオブジェクトを一括選択・削除する基本
それではまず検索と選択機能を使ってオブジェクトを一括選択・削除する基本的な方法について解説していきます。この方法が、エクセルでオブジェクトを効率的に削除する最も基本的かつ確実な手法となります。
オブジェクトの選択機能の使い方
Excelの「検索と選択」機能を使えば、シート上のすべてのオブジェクトを一度に選択できる仕組みです。
基本的な操作手順として、まず「ホーム」タブの右端にある「検索と選択」ボタンをクリックします。表示されるメニューから「オブジェクトの選択」を選択すると、マウスカーソルが矢印の形に変わり、オブジェクト選択モードになるのです。
この状態でシート上の空白部分をクリックしたまま、対角線上にドラッグして範囲を囲むと、その範囲内のすべてのオブジェクトが選択されます。シート全体のオブジェクトを選択したい場合は、Ctrl + Aキーを押すか、シート全体を囲むように大きくドラッグすればよいでしょう。
選択されたオブジェクトは、周囲に選択ハンドル(小さな丸や四角)が表示され、複数選択されている状態となります。この状態でDeleteキーを押せば、選択されたすべてのオブジェクトが一括で削除されるのです。
削除後、オブジェクト選択モードを解除するには、もう一度「検索と選択」から「オブジェクトの選択」をクリックしてチェックを外すか、Escキーを押します。これで通常のセル選択モードに戻り、通常の操作が可能になるでしょう。
ショートカットキーでの素早い操作
マウス操作よりも速い方法として、ショートカットキーを組み合わせる方法があります。
F5キーを押すと「ジャンプ」ダイアログが表示されます。その中の「セル選択」ボタンをクリックし、表示されるダイアログで「オブジェクト」にチェックを入れて「OK」をクリックすれば、シート上のすべてのオブジェクトが一括選択されるのです。
あるいは、Ctrl + Gキーでも同じ「ジャンプ」ダイアログを開けます。この方法は、キーボード操作だけで完結するため、マウスを使わずに素早く処理できるメリットがあるでしょう。
選択後はDeleteキーで削除するだけです。この一連の操作は、慣れれば数秒で完了するため、大量のオブジェクトがあるシートでも効率的に処理できます。
複数シートのオブジェクトを一括削除
複数のシートに同様のオブジェクトが配置されている場合、シートをグループ化して一括削除する方法もあります。
Ctrlキーを押しながら削除したいシートのタブを順番にクリックしてグループ化します。シートがグループ化されると、タブの背景色が白くなり、タイトルバーに「[作業グループ]」と表示されるのです。
この状態で前述のオブジェクト選択・削除操作を行えば、グループ化されたすべてのシートから同時にオブジェクトが削除されます。作業後は、どれか1つのシート見出しをクリックしてグループ解除を忘れないようにしましょう。
この方法は、同じフォーマットの月次レポートや支店別資料など、複数シートで同じ位置にオブジェクトがある場合に特に有効です。
オブジェクトを一括削除する前に、必ず削除してよいオブジェクトだけが選択されているか確認しましょう。重要なグラフやボタンまで削除してしまうと、シートの機能が失われる可能性があります。
削除前にファイルのバックアップを取るか、別名で保存してから作業することをおすすめします。また、Ctrl + Zで削除を取り消せますが、大量のオブジェクトを削除した場合は取り消しに時間がかかることがあります。
特定の種類のオブジェクトだけを選択・削除
続いては特定の種類のオブジェクトだけを選択して削除する方法を確認していきます。
オブジェクトの種類を理解する
Excelシート上に配置できるオブジェクトには、様々な種類があり、それぞれ異なる特性を持つため、理解が重要です。
主なオブジェクトの種類として、図形(四角形、円、矢印など)、画像(写真、イラスト、スクリーンショット)、グラフ(棒グラフ、円グラフなど)、テキストボックス、SmartArt、ボタンやチェックボックスなどのフォームコントロール、スライサーやタイムラインなどがあります。
標準の「オブジェクトの選択」機能では、これらすべてが選択対象となるため、グラフは残したいが図形だけを削除したいという場合は、別の方法を検討する必要があるでしょう。
種類によって選択方法や削除の影響が異なるため、作業前にどのオブジェクトを削除したいのか明確にすることが重要です。
選択ウィンドウでの個別選択
「選択ウィンドウ」を使えば、シート上のオブジェクトを一覧表示して個別に選択できる機能があります。
「ホーム」タブの「検索と選択」から「オブジェクトの選択と表示」を選択すると、画面右側に選択ウィンドウが表示されます。このウィンドウには、シート上のすべてのオブジェクトが名前付きでリスト表示されるのです。
リスト内のオブジェクト名をクリックすると、対応するオブジェクトがシート上で選択されます。Ctrlキーを押しながらクリックすれば複数選択でき、Shiftキーを押しながらクリックすれば範囲選択できるでしょう。
削除したいオブジェクトを選択した状態でDeleteキーを押せば、選択したオブジェクトだけが削除されます。この方法は、削除対象を視覚的に確認しながら作業できるため、ミスを防ぎやすいメリットがあります。
選択ウィンドウでは、オブジェクトの表示・非表示の切り替えや、前面・背面の順序変更も可能です。目のアイコンをクリックすれば、オブジェクトを削除せずに一時的に非表示にすることもできるでしょう。
名前による識別と選択
オブジェクトには自動的に名前が付けられており、名前のパターンで種類を判別できる場合があります。
図形には「四角形 1」「楕円 2」のような名前、画像には「画像 1」「画像 2」、グラフには「グラフ 1」、テキストボックスには「テキストボックス 1」という具合に、種類ごとに特徴的な名前が付けられるのです。
選択ウィンドウでこれらの名前を見れば、どのオブジェクトがどの種類かある程度判別できます。例えば「画像」で始まる名前のオブジェクトだけを選択すれば、画像だけを削除することが可能でしょう。
ただし、名前は後から変更できるため、カスタマイズされている場合は判別が難しくなります。その場合は、実際にオブジェクトをクリックして種類を確認する必要があります。
グラフは重要なデータの可視化要素であるため、誤って削除しないよう特に注意が必要です。グラフを残したい場合は、選択ウィンドウで「グラフ」という名前のオブジェクトを選択から除外しましょう。
また、ボタンやチェックボックスなどのフォームコントロールには、マクロが割り当てられている場合があります。これらを削除すると、シートの機能が失われる可能性があるため、慎重に判断しましょう。
画像だけを一括削除する方法
続いては画像だけを効率的に削除する具体的な方法を確認していきます。
画像の特定と選択
シート上の図形やグラフは残したまま、画像(写真やイラスト)だけを削除したいケースもあります。
標準機能では画像だけを選択するオプションがないため、選択ウィンドウを活用します。「ホーム」タブの「検索と選択」から「オブジェクトの選択と表示」を開き、リスト内で「画像」または「Picture」という名前のオブジェクトを探します。
Ctrlキーを押しながら、画像に該当するすべてのオブジェクトをクリックして選択していきます。すべての画像を選択できたら、Deleteキーを押して削除すれば、画像だけが削除され、他のオブジェクトは残るのです。
大量の画像がある場合は、リストを上から順番に確認し、「画像」という名前のものをすべて選択する作業になります。効率化のため、後述するVBAマクロの使用も検討するとよいでしょう。
埋め込み画像とリンク画像の違い
Excelに挿入される画像には、埋め込み画像とリンク画像の2種類があるため、注意が必要です。
埋め込み画像は、画像データがExcelファイル内に保存されているため、通常の削除方法で完全に削除できます。一方、リンク画像は外部ファイルへの参照だけが保存されており、削除してもファイルサイズがあまり減少しない場合があるのです。
ただし、最近のExcelではほとんどが埋め込み画像として扱われるため、通常の削除操作で問題ありません。ファイルサイズを大幅に削減したい場合は、画像を削除した後、ファイルを保存し直すことで効果が現れるでしょう。
画像圧縮機能との使い分け
画像を完全に削除するのではなく、ファイルサイズだけを削減したい場合は、画像圧縮機能の使用も検討できます。
画像を選択して「図の形式」タブの「図の圧縮」をクリックすると、画質を下げてファイルサイズを削減できます。「この画像だけに適用する」のチェックを外せば、ブック内のすべての画像が圧縮されるのです。
この方法は、画像は残したいがファイルサイズを小さくしたい場合に有効でしょう。完全に削除するのか、圧縮するだけでよいのか、目的に応じて使い分けることが重要です。
画像を削除する前に、その画像が重要な情報を含んでいないか確認しましょう。製品写真、ロゴ、署名画像などは、削除すると復元が困難な場合があります。
また、画像を大量に削除した後は、ファイルを一度閉じて再度開くことで、ファイルサイズの削減効果が確実に反映されます。削除直後はメモリ上にデータが残っている場合があるためです。
VBAマクロを使った高度な一括削除
続いてはVBAマクロを使った、より柔軟で高度な削除方法を確認していきます。
すべてのオブジェクトを削除するマクロ
VBAを使えば、ワンクリックですべてのオブジェクトを削除できるマクロを作成できます。
すべてのオブジェクトを削除するVBAコード:
“`
Sub すべてのオブジェクトを削除()
Dim obj As Object
For Each obj In ActiveSheet.Shapes
obj.Delete
Next obj
MsgBox “すべてのオブジェクトを削除しました”
End Sub
“`
使い方:
1. Alt + F11キーで「Visual Basic Editor」を開く
2. 「挿入」→「標準モジュール」を選択
3. 上記コードを貼り付け
4. Alt + F11キーで閉じる
5. Alt + F8キーでマクロを実行
このマクロを実行すると、アクティブシート上のすべての図形オブジェクトが一括削除されます。頻繁に同じ作業を行う場合は、クイックアクセスツールバーにボタンを追加すれば、さらに効率化できるでしょう。
特定の種類だけを削除するマクロ
VBAでは、オブジェクトの種類を判定して、特定の種類だけを削除することもできます。
画像だけを削除するマクロの例として、Type プロパティを使って画像(msPicture)だけを判定し、該当するオブジェクトを削除するコードを作成できます。このマクロを実行すれば、図形やグラフは残したまま、画像だけが削除されるのです。
同様に、グラフだけ、図形だけ、テキストボックスだけを削除するマクロも作成できます。Type プロパティの値を変更することで、様々な種類のオブジェクトに対応できるでしょう。
複数シートから一括削除するマクロ
すべてのシートから一度にオブジェクトを削除したい場合、シートをループするマクロが有効です。
ブック内のすべてのシートに対してオブジェクト削除処理を実行するマクロを作成すれば、数十枚のシートがあっても一瞬で処理が完了します。For Each ループを使ってワークシートを順番に処理していく仕組みです。
このマクロは、大規模なブックで複数のシートに不要なオブジェクトが散在している場合に特に威力を発揮するでしょう。ただし、すべてのシートから削除されるため、実行前に十分な確認が必要です。
VBAマクロを使用する場合は、必ず事前にバックアップを取ることを強くおすすめします。マクロは取り消しができないため、誤って重要なオブジェクトを削除してしまうと復元が困難です。
また、マクロを含むファイルは「.xlsm」形式で保存する必要があります。セキュリティ設定によってはマクロの実行がブロックされる場合があるため、信頼できる場所に保存するか、セキュリティ設定を確認しましょう。
オブジェクト削除に関するトラブルと対処法
続いてはオブジェクト削除時によくあるトラブルと解決方法を確認していきます。
削除できないオブジェクトの対処法
一部のオブジェクトが削除できない場合、保護設定やロックが原因である可能性があります。
シートが保護されている場合、オブジェクトの削除ができません。「校閲」タブの「シート保護の解除」をクリックし、パスワードを入力(設定されている場合)してシート保護を解除すれば、オブジェクトの削除が可能になるのです。
また、オブジェクト自体にロックが設定されている場合もあります。オブジェクトを右クリックして「図形の書式設定」を開き、「プロパティ」でロックのチェックを外せば削除できるようになるでしょう。
背景画像として設定されているオブジェクトは、通常の削除方法では削除できません。「ページレイアウト」タブの「背景の削除」から削除する必要があります。
削除後もファイルサイズが減らない場合
オブジェクトを削除したのにファイルサイズが減らない場合、データが完全に削除されていない可能性があります。
Excelは削除したオブジェクトのデータを一時的に保持している場合があります。ファイルを上書き保存し、一度閉じてから再度開くことで、データが完全に削除され、ファイルサイズが減少するのです。
それでもサイズが減らない場合は、「ファイル」タブの「情報」から「問題のチェック」→「ドキュメント検査」を実行します。「非表示の行と列の内容」や「非表示のワークシート」など、隠れたデータがないかチェックできるでしょう。
また、削除したオブジェクトの参照が数式やマクロに残っている場合、エラーの原因となることがあります。オブジェクトを削除した後は、関連する数式やマクロも確認することをおすすめします。
誤って削除した場合の復元方法
重要なオブジェクトを誤って削除してしまった場合、即座に取り消し操作を行うことで復元できます。
Ctrl + Zキーを押すか、クイックアクセスツールバーの「元に戻す」ボタンをクリックすれば、直前の削除操作が取り消されます。複数回の操作を取り消したい場合は、Ctrl + Zを繰り返し押すとよいでしょう。
ただし、ファイルを保存して閉じてしまった場合、元に戻す操作は使えません。この場合、以前のバージョンから復元するか、バックアップファイルから該当オブジェクトをコピーする必要があります。
Windows 10/11では、ファイルを右クリックして「以前のバージョンの復元」から、自動バックアップされたファイルを復元できる場合があります。OneDriveやSharePointに保存されているファイルの場合は、バージョン履歴から以前の状態に戻すことも可能でしょう。
トラブルを未然に防ぐためには、作業前の準備が重要です。重要なファイルを操作する際は、必ず別名で保存してからオブジェクトの削除を行いましょう。
また、定期的なバックアップの習慣を付けることで、万が一の事態にも対応できます。クラウドストレージの自動バックアップ機能を活用するのも効果的です。
まとめ エクセルでオブジェクトを一括選択・削除する方法
エクセルでオブジェクトを一括選択・削除する方法をまとめると
・基本操作:「検索と選択」→「オブジェクトの選択」で範囲選択し、Deleteキーで削除
・効率的な方法:F5キー→「セル選択」→「オブジェクト」で全選択、またはCtrl + Aで全選択
・個別選択:選択ウィンドウで一覧表示し、必要なオブジェクトだけを選択して削除
・高度な処理:VBAマクロで特定の種類だけを削除、複数シートから一括削除も可能
これらの方法を状況に応じて活用していけば、大量のオブジェクトでも数秒で削除でき、シートの整理作業が劇的に効率化されます。
特に「検索と選択」機能を使った基本操作をマスターすることが第一歩ですので、まずこれを試すことをおすすめします。
ただし、削除操作は取り消しが困難な場合があるため、注意が必要です。
重要なオブジェクトが含まれている可能性がある場合は、必ず事前にバックアップを作成し、選択ウィンドウで削除対象を確認してから実行する習慣を付けましょう。
Excelのオブジェクト管理機能を正しく活用して、スッキリと整理されたシートで快適に作業しましょう!