科学や計算関連

ダルシーの法則とは?ダルシー・ワイスバッハの式との違いや計算方法を解説(流体力学:圧力損失:管摩擦:水頭損失など)

ダルシーの法則の意味
当サイトでは記事内に広告を含みます

配管内を流れる水や油の設計では、流量だけでなく、流れる途中でどれほど圧力が失われるかを把握する必要があります。

その際に登場する代表的な考え方がダルシーの法則とダルシー・ワイスバッハの式です。

名称が似ているため混同されやすいものの、対象とする流れや計算に用いる値は異なります。

この記事では、透水係数、圧力損失、管摩擦、水頭損失、レイノルズ数といった関連語も交えながら、両者の違いと実務での計算方法をわかりやすく解説します。

ダルシーの法則の意味

ダルシーの法則の意味

それではまずダルシーの法則について解説していきます。

多孔質媒体を通る水の流れ

ダルシーの法則とは、土や砂、岩石、フィルターのような細かな隙間をもつ多孔質媒体の中を、水がどの程度流れるかを表す基本法則です。

フランスの技術者アンリ・ダルシーが砂ろ過の実験から見いだした関係であり、地下水工学、地盤工学、農業土木、ろ過装置の設計などで広く用いられます。

ここで扱う流れは、目に見える一本の管の中を水が流れる現象ではありません。

土粒子や砂粒子の間にある複雑な空隙を水がゆっくり通過する現象であり、流れの抵抗は粒子の大きさ、空隙率、土の締まり具合などの影響を受けます。

水が高い位置から低い位置へ移動するのは、位置エネルギーと圧力エネルギーを合わせた水頭に差が生じるためです。

この水頭差が大きいほど流れは増え、通り道が長いほど流れにくくなるという関係が、ダルシーの法則の中心になります。

透水係数と動水勾配

ダルシーの法則は、一般に次のように表されます。

Q = kAi

Qは流量、kは透水係数、Aは流れに直交する断面積、iは動水勾配を示します。

動水勾配iは、水頭差を流路長で割った値です。

透水係数kは、土やろ材がどれだけ水を通しやすいかを表す値です。

単位には毎秒メートルや毎秒センチメートルが使われ、値が大きいほど透水性が高いと判断できます。

たとえば砂利は空隙が大きく連続しやすいため透水係数が大きくなりやすく、粘土は微細な粒子が密に並ぶため小さくなる傾向があります。

透水係数は水だけで決まる値ではなく、土の性質と流体の粘性に関係する値です。

水温が変われば粘度も変化するため、精密な比較では基準温度に換算することがあります。

動水勾配は、単純な地面の傾きとは限りません。

地下水の圧力を含めた水頭の差を用いるため、地表面が水平に見えても、地下の水頭分布によって水が流れる場合があります。

適用条件と限界

ダルシーの法則は便利ですが、どのような流れにもそのまま適用できるわけではありません。

特に重要なのは、流速が小さく、流れが層流の範囲にあることです。

多孔質媒体の中で流速が大きくなると、慣性の影響が無視できなくなり、流量と動水勾配が単純な比例関係から外れることがあります。

このような場面では、フォルヒハイマー式など、非ダルシー流れを考慮する式を検討します。

ダルシーの法則は、土や砂などの多孔質媒体を対象にした流量計算の基礎です。

一般的な配管の管摩擦を直接求める式ではない点が、ダルシー・ワイスバッハの式との大きな違いになります。

井戸の揚水量を見積もる場合、盛土内の排水を検討する場合、あるいはろ過層の通水性能を評価する場合には、対象が多孔質媒体かどうかを最初に確認するとよいでしょう。

ダルシー・ワイスバッハの式の仕組み

続いてはダルシー・ワイスバッハの式を確認していきます。

管内流れと圧力損失

ダルシー・ワイスバッハの式は、円管などの配管を流体が流れるときに生じる管摩擦による圧力損失を求めるための式です。

水道配管、冷温水配管、空調ダクトの流体計算、ポンプ選定、化学プラントの配管設計など、流体力学の実務で基本となります。

配管の入口から出口へ水が流れると、管壁との摩擦によって機械的エネルギーの一部が熱などに変わります。

その結果、下流側では圧力や水頭が低下します。

この低下量を圧力損失または水頭損失として定量化するのが、ダルシー・ワイスバッハの式の役割です。

ここでいうダルシーは、多孔質媒体の法則で知られるダルシーと同じ人物に由来しますが、式の使い方は明確に区別する必要があります。

水頭損失の計算式

管摩擦による水頭損失は、次の式で表されます。

hf = λ × L ÷ D × vの二乗 ÷ 2g

hfは摩擦損失水頭、λは管摩擦係数、Lは管長、Dは管内径、vは平均流速、gは重力加速度です。

圧力損失に換算する場合は、Δp = ρghfを用います。

式を見ると、管長が長いほど、また内径が小さいほど水頭損失が増えることがわかります。

さらに流速は二乗で効くため、流量を少し増やしただけでも圧力損失が大きく増えることがあります。

配管径の選定で余裕が不足すると、必要な流量が出ない、ポンプ動力が増える、騒音や振動が発生するといった問題につながるでしょう。

圧力損失の大きさを左右する主要因は、流速、管長、内径、管内面の粗さです。

設計条件を整理せずに計算を始めると、単位の取り違えや流速設定の誤りが起きやすくなります。

摩擦損失と局部損失

ダルシー・ワイスバッハの式で主に扱うのは、まっすぐな管の内面摩擦によって連続的に発生する損失です。

これを管路の摩擦損失と呼びます。

一方で、エルボ、バルブ、分岐、急拡大、急縮小、入口、出口などでは、流れの向きや断面が急変するため、局部的なエネルギー損失が生まれます。

これが局部損失です。

局部損失水頭 = ζ × vの二乗 ÷ 2g

ζは局部損失係数であり、継手や弁の形状、開度、流れの状態によって変化します。

配管全体の損失水頭は、摩擦損失と局部損失を合計して求めます。

短い配管でも継手やバルブが多い設備では、局部損失を無視できません。

反対に、長距離配管では、直管部の摩擦損失が支配的になるケースが多く見られます。

両式の違いと使い分け

続いては両式の違いと使い分けを確認していきます。

対象となる流路の違い

最も基本的な違いは、流体が通る場所です。

ダルシーの法則は、砂や土の中にある不規則な空隙を流れる水を扱います。

ダルシー・ワイスバッハの式は、内径が定まった配管や円管の中を流れる水、油、空気などを扱います。

つまり、前者は地盤やろ材の内部流れ、後者は明確な管壁をもつ管内流れに使う式です。

名称の一部が共通していても、片方の式にもう片方の数値をそのまま代入することはできません。

比較項目 ダルシーの法則 ダルシー・ワイスバッハの式
主な対象 土、砂、岩盤、ろ過層 配管、円管、流路
求める内容 多孔質媒体を通る流量 管摩擦による水頭損失や圧力損失
代表的な係数 透水係数 管摩擦係数
流れの特徴 空隙内の低速な浸透流 管内の層流または乱流
主な分野 地盤、地下水、ろ過 機械、設備、化学、土木配管

係数の意味の違い

ダルシーの法則に登場する透水係数は、材料が水を通す能力を表す係数です。

土質試験や現地透水試験などから求め、土の粒度、密度、間隙比、水の温度などを踏まえて扱います。

一方のダルシー・ワイスバッハの式に登場する管摩擦係数は、流れと管壁の相互作用を表す無次元量です。

管の材質、粗さ、流速、粘度、レイノルズ数によって変化します。

この二つの係数は名称も単位も意味も異なります。

透水係数と管摩擦係数を混同すると、計算結果の単位そのものが成立しなくなるため注意が必要です。

実務での判断基準

対象が土中の浸透、地下水の移動、フィルター通過量であれば、まずダルシーの法則を検討します。

対象がポンプからタンクまでの配管、給水管、冷却水配管、油圧配管であれば、ダルシー・ワイスバッハの式を軸に損失水頭を求めます。

流路が粒子間の空隙ならダルシーの法則、流路が管内ならダルシー・ワイスバッハの式が基本です。

迷ったときは、流体がどのような壁面と接して流れるのかを図で確認すると判断しやすくなります。

実際の設備では、地盤内の浸透と排水管の流れが連続して存在する場合もあります。

そのような場合は一つの式だけで完結させず、区間ごとに適切な式を選び、境界条件をつないで検討します。

管摩擦係数とレイノルズ数

続いては管摩擦係数とレイノルズ数を確認していきます。

層流と乱流の区分

ダルシー・ワイスバッハの式で計算精度を左右するのが、管摩擦係数λです。

この値を決めるためには、流れが層流なのか乱流なのかを見分ける必要があります。

その判断に用いる無次元数がレイノルズ数です。

Re = vD ÷ ν

Reはレイノルズ数、vは平均流速、Dは管内径、νは動粘度です。

水の場合、温度によって動粘度が変わるため、温度条件も確認します。

一般に円管内では、レイノルズ数がおよそ二千三百以下なら層流、四千以上なら乱流として扱われることが多いでしょう。

その間は遷移領域と呼ばれ、流れが不安定になりやすいため、設計では慎重な扱いが求められます。

層流域における計算

十分に発達した円管内層流では、管摩擦係数は比較的簡単に求められます。

ダルシー摩擦係数を用いる場合、λは六十四をレイノルズ数で割った値です。

粘性の影響が支配的な層流では、管内面の粗さよりも、粘度や流速の影響が大きくなります。

細い管をゆっくり流れる油、粘性の高い液体、微小流路などを扱うときは、層流としての評価が重要になります。

ただし、配管の入口付近では速度分布が未発達なこともあります。

高精度な検討では、助走区間や温度変化、粘度変化まで考慮することが望ましいでしょう。

乱流域と相対粗さ

乱流では、流体の混ざり合いが強くなり、壁面近くの抵抗も複雑になります。

管摩擦係数はレイノルズ数だけでなく、管内面の粗さと管径の比である相対粗さにも左右されます。

鋼管、鋳鉄管、塩化ビニル管、銅管などでは表面状態が異なるため、同じ流量と管径でも圧力損失が変わります。

実務ではムーディ線図、コールブルックの式、スワミー・ジェイン式などを使って管摩擦係数を求めます。

古い配管では腐食やスケールによって実質的な粗さが増え、圧力損失が設計時より大きくなる場合があります。

既設設備の能力低下を調べる際には、図面上の管径だけでなく、経年劣化による内面状態も確認したいところです。

圧力損失の計算手順

続いては圧力損失の計算手順を確認していきます。

必要条件の整理

計算を始める前に、流体の種類、温度、流量、配管内径、管長、管材、継手やバルブの種類を整理します。

流量は毎秒立方メートル、毎分リットル、毎時立方メートルなど、さまざまな単位で示されるため、最初に単位を統一することが大切です。

流体の密度と粘度も必要になります。

水であっても温度が大きく変われば粘度が変化し、レイノルズ数と摩擦係数に影響します。

また、呼び径と実際の内径が一致しない配管もあります。

計算には必ず実内径または仕様書で確認した内径を用いるようにします。

直管部の損失計算

次に、流量Qを管断面積Aで割って平均流速vを求めます。

円管の断面積は、内径Dから計算できます。

流速が求まったら、動粘度を使ってレイノルズ数を算出し、層流か乱流かを判定します。

その後、管材の粗さとレイノルズ数から管摩擦係数を決定し、ダルシー・ワイスバッハの式へ代入します。

水が毎秒〇・〇一立方メートル流れ、内径〇・一メートル、管長五十メートルの配管を考えます。

断面積から流速を求め、レイノルズ数と粗さを確認したうえで管摩擦係数を選定します。

その係数を用いて摩擦損失水頭を計算し、必要に応じて密度と重力加速度から圧力損失へ換算します。

計算結果がメートルで出た場合は水頭損失、パスカルやキロパスカルで出た場合は圧力損失です。

二つは別の表現ですが、密度と重力加速度を介して相互に換算できます。

局部損失を含めた全体評価

直管部の摩擦損失だけでは、配管システム全体の必要圧力を正しく評価できないことがあります。

エルボ、ティー、ストレーナー、逆止弁、仕切弁、流量計などの局部損失も加算します。

局部損失係数が資料で得られない場合には、等価管長として直管換算する方法もあります。

これは継手一つ分の損失を、一定長さの直管摩擦損失に置き換える考え方です。

ポンプ揚程の検討では、直管摩擦損失、局部損失、高低差、必要吐出圧力を合計して考えます。

圧力損失だけを見てポンプを選ぶと、末端で必要な圧力が確保できないおそれがあります。

さらに、将来の増設、流量変動、汚れによる抵抗増加も考慮し、適切な余裕を持たせることが実務的です。

設計とトラブル対策の要点

続いては設計とトラブル対策の要点を確認していきます。

配管径選定の考え方

配管径を小さくすると材料費や設置スペースを抑えやすい一方、流速が上がって圧力損失とポンプ動力が増えます。

反対に大きな管径を選ぶと、初期費用は増えるものの、運転時の損失を減らせる可能性があります。

そのため、配管設計では初期コストだけでなく、電力費や保守費を含めたライフサイクルコストで比較することが重要です。

流速の上限は、圧力損失だけでなく、騒音、ウォーターハンマー、摩耗、振動にも関係します。

用途ごとの推奨流速を参考にしつつ、設備条件に合わせて判断する必要があります。

計算時に起こりやすい誤り

よくある誤りの一つは、管の外径を内径として使ってしまうことです。

内径が少し違うだけでも断面積と流速が変わり、流速の二乗に比例する損失計算では差が大きくなります。

もう一つは、粘度の単位や動粘度と粘度を混同することです。

データシートに示された値が動粘度なのか粘度なのかを確認し、密度との関係を正しく扱う必要があります。

また、摩擦係数にはダルシー摩擦係数とファニング摩擦係数があります。

両者には四倍の関係があるため、参照した式と係数の定義を揃えなければなりません。

式の形、係数の定義、単位系を一組として確認することが、圧力損失計算の信頼性を高めます。

ダルシーの法則を使う場面の注意

地盤の排水検討では、室内試験で得た透水係数をそのまま現地へ適用できるとは限りません。

現地の土層は不均質であり、層ごとの透水性、割れ目、締固め状態、地下水位の変動などが影響するためです。

また、異方性がある地盤では、水平方向と鉛直方向で透水係数が異なる場合もあります。

ろ過装置では、運転を続けるうちに粒子が捕捉され、ろ材の目詰まりによって損失水頭が増加します。

初期の透水性能だけでなく、洗浄周期や交換時期を見据えた評価が必要になるでしょう。

ダルシーの法則は浸透流の出発点であり、ダルシー・ワイスバッハの式は管路損失の出発点です。

どちらも単独の数式として覚えるより、対象の流路とエネルギー損失の仕組みを理解して使い分けることが大切です。

まとめ

ダルシーの法則は、土、砂、岩盤、ろ材などの多孔質媒体を水が通過するときの流量を扱う法則です。

透水係数と動水勾配を用い、地下水や地盤内排水、ろ過の検討で活用されます。

一方のダルシー・ワイスバッハの式は、配管内を流れる流体の管摩擦による水頭損失や圧力損失を計算する式です。

計算では流速、管長、内径、管摩擦係数、レイノルズ数、管内面の粗さを適切に扱う必要があります。

多孔質媒体の浸透流にはダルシーの法則、管内流れの圧力損失にはダルシー・ワイスバッハの式という整理を押さえると、両者を混同しにくくなります。

さらに、配管設計では局部損失、高低差、ポンプ揚程、将来の劣化まで含めて検討することで、安定した流体設備の計画につながります。