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Excelで利益率を求める計算式|粗利率・営業利益率の出し方を実例付き解説

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ビジネスにおいて、利益率の把握は経営判断の基礎となる重要な指標です。

しかし、粗利率、営業利益率、純利益率など、利益率には複数の種類があり、それぞれ計算方法が異なります。手計算では時間がかかるだけでなく、計算ミスのリスクも高まるでしょう。

Excelを活用すれば、これらの利益率を自動的に算出でき、売上データを入力するだけで即座に収益性を分析できます。商品別、顧客別、期間別など、様々な切り口での利益率比較も簡単に実現できるのです。

本記事では、利益率の基本的な計算方法から、Excelでの実践的な数式の作り方、さらには利益率分析を効率化するテクニックまで、実務ですぐに使える知識を詳しく解説します。経理担当者はもちろん、営業や経営者の方にも役立つ内容ですので、ぜひ最後までご覧ください。

利益率の基本知識と種類

それではまず利益率の基本知識と種類について解説していきます。

利益率とは何か|基本的な考え方

利益率とは、売上高に対する利益の割合を示す指標です。

単純に「いくら儲かったか」という金額だけでなく、「売上のうち何パーセントが利益になったか」という効率性を表します。これにより、売上規模が異なる商品や事業でも、収益性を公平に比較できるのです。

基本的な計算式は以下の通りとなります。

利益率(%)= 利益 ÷ 売上高 × 100

例:
売上高:100万円
利益:20万円
利益率 = 20万円 ÷ 100万円 × 100 = 20%

利益率が高いほど、少ない売上で多くの利益を生み出していることを意味します。つまり、ビジネスの効率性や収益力が高いと判断できるでしょう。

ただし、利益にはいくつかの段階があり、どの利益を使うかによって利益率の意味も変わってきます。

粗利率(売上総利益率)の意味と重要性

粗利率は、最も基本的な利益率で、売上から売上原価を引いた粗利益の割合を示します。

別名「売上総利益率」とも呼ばれ、商品やサービスそのものの収益性を測る指標です。

粗利率(%)=(売上高 − 売上原価)÷ 売上高 × 100
または
粗利率(%)= 粗利益 ÷ 売上高 × 100

例:
売上高:100万円
売上原価:60万円
粗利益:40万円
粗利率 = 40万円 ÷ 100万円 × 100 = 40%

粗利率は、商品の値付けや仕入れコストの適切性を判断する上で極めて重要です。業種によって標準的な粗利率は異なりますが、一般的に小売業では20〜30%、サービス業では50〜70%程度が目安とされています。

粗利率が分かると何ができる?
・商品ごとの収益性比較
・価格設定の妥当性チェック
・仕入れ価格交渉の根拠作り
・収益改善の優先順位付け

粗利率が低い商品は、価格を上げるか原価を下げる必要があるでしょう。

営業利益率と純利益率の違い

粗利率以外にも、経営分析では複数の利益率指標が使われます。

利益率の種類 計算式 何が分かるか
粗利率 (売上高−売上原価)÷売上高 商品・サービスの収益性
営業利益率 営業利益÷売上高 本業の収益性
経常利益率 経常利益÷売上高 財務活動含む総合収益性
純利益率 当期純利益÷売上高 最終的な収益性

営業利益率は、粗利益から販管費を差し引いた営業利益の割合です。人件費、広告費、家賃などのコストを考慮した、本業での真の収益性が分かります。

純利益率は、営業外収益・費用や税金まで含めた最終的な利益の割合です。企業全体の総合的な収益力を示す指標となるでしょう。

実務では、目的に応じてこれらの利益率を使い分けることが重要です。

Excelで粗利率を計算する方法

続いてはExcelで粗利率を計算する具体的な方法を確認していきます。

基本的な粗利率の計算式

Excelで粗利率を計算する最もシンプルな方法を見ていきましょう。

以下のようなデータがあると仮定します。

A列:商品名
B列:売上高
C列:売上原価
D列:粗利益
E列:粗利率

まず粗利益を計算します。

D2セルに入力:=B2-C2

これで「売上高−売上原価」が計算されます。

次に粗利率を求めます。

E2セルに入力:=D2/B2

または、粗利益を別セルに出さずに一つの数式で計算する場合:
E2セルに入力:=(B2-C2)/B2

パーセント表示にするには、E列を選択してホームタブの「パーセントスタイル」ボタンをクリックするか、セルの書式設定で「パーセンテージ」を選択します。

この数式を下方向にコピーすれば、複数商品の粗利率を一度に計算できるでしょう。

原価率から粗利率を求める方法

原価率が分かっている場合、粗利率は「100% − 原価率」で簡単に算出できます。

粗利率 = 1 − 原価率

例:
原価率が60%の場合
粗利率 = 1 − 0.6 = 0.4(40%)

Excelでの数式は以下の通りです。

=1-C2

※C2:原価率(小数点表示または%表示)

逆に、粗利率から原価率を求めることもできます。

原価率 = 1 − 粗利率

Excel数式:=1-D2
※D2:粗利率

この関係性を理解しておけば、どちらか一方のデータがあればもう一方を即座に計算できるため、データ入力の手間が省けるでしょう。

原価率と粗利率は常に合計が100%になる補完的な関係にあることを覚えておいてください。

複数商品の粗利率を一括計算する

実務では、数十から数百の商品データを扱うことも珍しくありません。

複数商品の粗利率を効率的に計算するテクニックを紹介します。

手順1:見出し行を設定
A1:商品名、B1:売上高、C1:売上原価、D1:粗利益、E1:粗利率

手順2:最初のデータ行に数式を入力
D2:=B2-C2(粗利益)
E2:=(B2-C2)/B2(粗利率)

手順3:数式をコピー
D2とE2を選択し、右下の小さな四角(フィルハンドル)をダブルクリック
→データがある最終行まで自動的にコピーされます

さらに、テーブル機能を使うとより便利です。

テーブル化の手順:
1. データ範囲を選択
2. 「挿入」タブ→「テーブル」をクリック
3. 「先頭行をテーブルの見出しとして使用する」にチェック
4. 数式を入力すると、自動的に全行に適用される

テーブルにすることで、新しい商品を追加したときに自動的に数式が適用されるため、メンテナンス性が格段に向上するでしょう。

また、条件付き書式を使って粗利率の高低を色分けすれば、視覚的に収益性の高い商品を把握できます。

営業利益率・純利益率の計算方法

続いては営業利益率と純利益率の計算方法を確認していきます。

営業利益率を求める数式

営業利益率は、粗利益から販売費及び一般管理費(販管費)を引いた営業利益の割合です。

計算に必要なデータと数式を見ていきましょう。

営業利益率の計算式:
営業利益率(%)= 営業利益 ÷ 売上高 × 100

営業利益の求め方:
営業利益 = 粗利益 − 販管費
または
営業利益 = 売上高 − 売上原価 − 販管費

Excelでの実装例は以下の通りです。

前提:
B2:売上高
C2:売上原価
D2:販管費
E2:粗利益
F2:営業利益
G2:営業利益率

数式:
E2(粗利益):=B2-C2
F2(営業利益):=E2-D2
G2(営業利益率):=F2/B2

または一つの数式で:
G2:=(B2-C2-D2)/B2

営業利益率は、企業の本業での稼ぐ力を示す重要な指標です。一般的に10%以上あれば優良企業とされますが、業種によって基準は大きく異なります。

販管費には人件費、広告宣伝費、家賃、水道光熱費などが含まれるため、コスト管理の効果が直接反映されるでしょう。

経常利益率・純利益率の算出

経常利益率と純利益率は、さらに詳細な収益性を示す指標です。

経常利益率:営業外収益・費用を含めた利益率
純利益率:税金や特別損益まで含めた最終的な利益率

それぞれの計算式は以下の通りです。

経常利益率(%)= 経常利益 ÷ 売上高 × 100

経常利益の求め方:
経常利益 = 営業利益 + 営業外収益 − 営業外費用

純利益率(%)= 当期純利益 ÷ 売上高 × 100

当期純利益の求め方:
当期純利益 = 経常利益 + 特別利益 − 特別損失 − 法人税等

Excelでの実装例です。

H2(経常利益):=F2+営業外収益-営業外費用
I2(経常利益率):=H2/B2

J2(当期純利益):=H2+特別利益-特別損失-法人税等
K2(純利益率):=J2/B2

利益の段階 含まれるコスト 見るべきポイント
粗利益 売上原価のみ 商品力・価格設定
営業利益 原価+販管費 本業の収益力
経常利益 営業+金融収支 総合的な経営状態
純利益 すべて 株主還元の原資

これらの利益率を並べて比較することで、どの段階でどれだけコストがかかっているかが明確になります。

段階的な利益率分析の作り方

実務では、複数の利益率を一つの表で段階的に表示すると分析しやすくなります。

損益計算書(P/L)形式での利益率分析表の作成方法を紹介しましょう。

A列:項目名
B列:金額
C列:売上高比率(%)

構成例:
A2:売上高    B2:1000000 C2:=B2/B$2
A3:売上原価   B3:600000  C3:=B3/B$2
A4:粗利益    B4:=B2-B3  C4:=B4/B$2
A5:販管費    B5:250000  C5:=B5/B$2
A6:営業利益   B6:=B4-B5  C6:=B6/B$2
A7:営業外収益  B7:20000  C7:=B7/B$2
A8:営業外費用  B8:10000  C8:=B8/B$2
A9:経常利益   B9:=B6+B7-B8 C9:=B9/B$2

この表のポイントは、すべての比率を売上高(B$2)を基準に計算している点です。$記号による絶対参照を使うことで、数式をコピーしても常に売上高を基準とした計算ができます。

条件付き書式で利益率に色を付ければ、一目で収益構造が把握できるでしょう。例えば、営業利益率が10%以上なら青、5%未満なら赤といった設定が有効です。

利益率分析を効率化するExcelテクニック

続いては利益率分析を効率化するExcelテクニックを確認していきます。

目標利益率から必要売上を逆算する

経営計画を立てる際、目標とする利益率を達成するために必要な売上高を逆算したいケースがあります。

例えば「粗利率40%を確保しながら、100万円の粗利益を得るには、いくら売上が必要か」という計算です。

必要売上高 = 目標粗利益 ÷ 目標粗利率

例:
目標粗利益:100万円
目標粗利率:40%(0.4)
必要売上高 = 100万円 ÷ 0.4 = 250万円

Excelでの数式は以下の通りです。

前提:
B2:目標粗利益(円)
C2:目標粗利率(%)

必要売上高(D2):=B2/C2

さらに応用して、現在の原価から必要な販売価格を算出することもできます。

販売価格 = 原価 ÷(1 − 目標粗利率)

例:
原価:600円
目標粗利率:40%
販売価格 = 600円 ÷(1 − 0.4)= 600円 ÷ 0.6 = 1,000円

Excel数式:=B2/(1-C2)

この計算を使えば、目標利益率を維持するための適切な価格設定が簡単に行えるでしょう。

商品別・顧客別の利益率比較表

複数の商品や顧客の利益率を比較する際は、ピボットテーブルを活用すると効率的です。

ピボットテーブルを使えば、大量のデータから簡単に集計と分析ができます。

基本データの構成例:
A列:日付
B列:商品名
C列:顧客名
D列:売上高
E列:売上原価
F列:粗利益(=D列-E列)
G列:粗利率(=F列/D列)

ピボットテーブルの作成手順は以下の通りです。

1. データ範囲を選択
2. 「挿入」タブ→「ピボットテーブル」をクリック
3. 配置設定:
・行:商品名(または顧客名)
・値:売上高の合計、粗利益の合計
4. 計算フィールドで粗利率を追加:
「ピボットテーブル分析」→「フィールド/アイテム/セット」
→「計算フィールド」
名前:粗利率
数式:=粗利益/売上高

スライサー機能を追加すれば、期間や地域などの条件で簡単にフィルタリングできます。

さらに、条件付き書式で利益率を色分けすれば、収益性の高い商品や顧客が一目で分かるでしょう。上位20%の商品に注力するなど、戦略的な判断材料として活用できます。

利益率の推移をグラフで可視化する

利益率の時系列変化を把握するには、グラフによる可視化が効果的です。

月次や四半期ごとの利益率推移をグラフにすることで、トレンドや季節変動が見えてきます。

推奨グラフタイプ:
1. 折れ線グラフ:時系列での変化を見る
2. 複合グラフ:売上高(棒)と利益率(折れ線)を重ねる
3. 積み上げ縦棒グラフ:売上構成と利益率を同時に表示

特に複合グラフは有効で、売上高と利益率の両方を一つのグラフで表現できます。

複合グラフの作成手順:
1. 月別の売上高と利益率のデータを準備
2. データ範囲を選択して「挿入」→「複合グラフ」
3. 売上高:集合縦棒、利益率:折れ線を選択
4. 利益率を第2軸に設定

このグラフを見れば、売上が伸びているのに利益率が下がっているといった問題をすぐに発見できるでしょう。

ダッシュボードとして、主要な利益率指標を一つのシートにまとめ、毎月更新していく仕組みを作ることをおすすめします。経営会議の資料としても活用できますし、改善施策の効果測定にも役立つはずです。

グラフのタイトルや軸ラベルを分かりやすく設定し、誰が見ても理解できる資料作りを心がけましょう。

まとめ

Excelでの利益率計算は、基本的な数式を理解すれば誰でも簡単に実践できます。

最も基本的な粗利率は「(売上高−売上原価)÷売上高」で求められ、商品やサービスそのものの収益性を示す重要な指標です。営業利益率や純利益率など、より詳細な利益率を段階的に計算することで、どの段階でコストがかかっているかが明確になるでしょう。

実務では、目標利益率から必要売上を逆算したり、商品別・顧客別の利益率を比較したりと、様々な分析が求められます。ピボットテーブルやグラフ機能を活用すれば、大量のデータからも素早く有益な情報を引き出せるのです。

利益率の正確な把握と継続的な分析は、収益改善の第一歩となります。本記事で紹介した方法を活用し、データに基づいた経営判断を実践してみてください。