特筆という言葉は、ビジネス文書や報告書、自己紹介、ニュース記事などで見聞きする機会があります。
何となく重要なことを表す語だと理解していても、特筆すべき点や特筆する内容といった表現を、自信を持って使える人は少なくないでしょう。
似た言葉には注目、重要、顕著、特別などがありますが、特筆にはほかの語とは異なる焦点があります。
この記事では、特筆の正確な意味、読み方、使い方、例文、ビジネスでの注意点を、わかりやすく整理します。
特筆の意味と基本的な使い方

それではまず特筆の意味と使い方について解説していきます。
特筆の読み方と語源
特筆の読み方は、とくひつです。
特はほかと異なる、特に目立つといった意味を持ち、筆は文字を書くことや文章として記すことを表します。
つまり特筆は、数ある事柄のなかでも特に取り上げて書く価値があること、またはそのように書き記すことを指す言葉です。
日常会話よりも、文章や改まった説明の場面で使われやすい傾向があります。
単に目立つという意味ではなく、目立つために記録や説明の対象として選ばれるというニュアンスを含む点が大切です。
たとえば成績が良い人がいても、全体のなかで際立つ成果があり、報告書に記す意味がある場合に特筆すべき成果と表現できます。
特筆するの意味
特筆するは、特に取り上げて書く、または特に注目すべき事柄として記すという意味の動詞です。
文章では、特筆するべき点、特筆すべき事項、特筆しておきたい事実のように使われます。
特筆するは、評価の高低だけを示す語ではありません。
良い結果に使われることが多い一方で、問題点や例外的な事情を読者に伝えるときにも使用できます。
特筆するの例
今回の調査では、若年層の利用率が大幅に上昇した点を特筆します。
事故は発生していませんが、点検記録の欠落については特筆すべき課題です。
このように、特筆する対象は成果だけでなく、注意が必要な事実にもなり得ます。
書き手が何を重要な情報として選ぶのかが伝わる表現といえるでしょう。
特筆すべきの位置づけ
特筆すべきは、特に取り上げて書くほど価値や重要性があるという意味です。
特筆すべき点、特筆すべき事項、特筆すべき成果など、名詞の前に置く使い方が一般的です。
特に重要なこととほぼ同じように見えても、特筆すべきには、ほかの情報から区別して伝える意識が含まれます。
そのため、本文にすでに多くの情報があるなかで、読者が見落としてはいけない点を示す場合に便利です。
特筆すべきという表現は、重要性を強調するだけの言葉ではありません。
多くの情報のなかから、読み手に優先して把握してほしい事項を示す言葉です。
ただし、どの項目にも特筆すべきと付けると、強調の効果が薄れてしまいます。
本当に差がある事実や、判断に影響する要素に絞って使うことが望ましいでしょう。
特筆の使い分けと表現一覧
続いては特筆の言い換えと使い分けを確認していきます。
ビジネス文書で使う表現
ビジネスでは、特筆すべき点という形が特によく使われます。
報告書、議事録、企画書、評価シートなどで、重要な成果や例外事項を簡潔に示したいときに適しています。
| 表現 | 主な意味 | 適した場面 | 印象 |
|---|---|---|---|
| 特筆すべき点 | 特に記録する価値がある点 | 報告書や評価書 | 客観的で改まった印象 |
| 注目すべき点 | 注意を向けるべき点 | 企画説明や分析資料 | 幅広く使いやすい印象 |
| 重要な点 | 判断や理解に必要な点 | 案内文や会議資料 | 直接的で明快な印象 |
| 顕著な成果 | はっきり目立つ成果 | 人事評価や実績紹介 | 成果の大きさを伝える印象 |
| 特記すべき事項 | 別途記しておく事項 | 申請書や業務記録 | 事務的で正式な印象 |
| 留意すべき点 | 注意しておく必要がある点 | 注意事項や手順書 | 慎重さを促す印象 |
売上が前年を上回ったという事実を述べるだけなら、重要な成果でも十分です。
一方で、市場全体が低調ななかで売上を伸ばしたような、文脈を踏まえて特に取り上げる価値がある場合には、特筆すべき成果がよく合います。
評価や実績に使う表現
人事評価や推薦文では、特筆すべき実績、特筆すべき貢献、特筆すべき能力といった表現が使えます。
ただし、具体性のないまま使うと、評価の根拠がぼやけることがあります。
特筆という言葉の後には、数値、行動、改善内容、周囲への影響などを添えると説得力が増します。
抽象的な例
彼には特筆すべき能力があります。
具体的な例
彼には、複数部署の課題を整理し、二週間で運用手順を再設計した特筆すべき調整力があります。
後者では、何が優れているのかを読み手が具体的に想像できます。
特筆という評価語は、根拠となる事実と組み合わせることが基本です。
問題点や例外に使う表現
特筆は、前向きな内容だけに限定されません。
特筆すべき懸念、特筆すべき例外、特筆すべき不具合のように、通常と異なる注意事項を示す場合にも使えます。
この使い方では、重大であると断定するよりも、報告に値する特徴があることを伝える働きをします。
| 状況 | 自然な表現 | 伝わる内容 |
|---|---|---|
| 改善効果が大きい | 特筆すべき改善効果 | 通常以上に注目できる結果 |
| 少数の例外がある | 特筆すべき例外 | 全体理解に影響する例外 |
| 確認が必要な点がある | 特筆すべき懸念事項 | 読者に共有すべきリスク |
| 珍しい変化が起きた | 特筆すべき変化 | 記録に残す価値がある変化 |
ネガティブな内容に使う際は、不安を必要以上にあおらないよう、事実と対応方針を併せて記すとよいでしょう。
特筆を使った例文と書き換え
続いては特筆を使った例文と自然な書き換えを確認していきます。
一般的な会話や文章の例文
特筆は硬めの表現ですが、メールや文章であれば日常的な話題にも使えます。
たとえば、今回の旅行で特筆すべき出来事は、予定外に美しい景色を見られたことですという文は自然です。
また、この本には特筆すべき視点があるという使い方では、ほかの本とは異なる着眼点があることを伝えられます。
ただし、親しい相手との短い会話では、すごく印象的だった、特に良かったなどのほうが柔らかく伝わることもあります。
言葉の改まり具合は、相手や媒体に合わせることが重要です。
ビジネスメールの例文
ビジネスメールでは、特筆すべき点は以下のとおりですという表現が便利です。
ただし、以下という語の後に実際の内容が続くことを明確にし、重要事項を簡潔に並べる必要があります。
メールでの使用例
ご確認いただきたい特筆すべき点は、納期が前回予定より三日早まる見込みであることです。
本件について特筆すべき懸念はありませんが、最終確認の結果は明日共有します。
先月と比較して問い合わせ件数が増加した点は、特筆すべき変化と考えています。
特筆すべき点を使うときは、読み手にとって何が重要なのかを一読で理解できる文章を目指しましょう。
敬語を重ねすぎるより、事実と理由を短く整理することが伝わりやすさにつながります。
不自然になりやすい例文
特筆は便利な語ですが、使用場面を誤ると大げさに見える場合があります。
たとえば、今日の昼食は特筆すべきおいしさでしたという文は文法上は誤りではありません。
しかし、日常的な感想としては少し硬く、レビューや正式な記録のような印象になります。
また、特筆すべき重要な問題という表現は、特筆と重要が重なり、必要以上に強調しているように感じられることがあります。
特筆は、ほかと区別して書く価値を示す言葉です。
重要、非常に、極めてなどの強調語を重ねる前に、具体的な事実を加えるほうが文章は自然になります。
特筆すべき問題では意味が弱いと感じる場合は、重大な問題、早急な対応が必要な問題など、伝えたい内容に合う言葉へ置き換える方法もあります。
特筆と類語の違い
続いては特筆と類語の違いを確認していきます。
特記との違い
特筆と特記は、どちらも特に取り上げて記すことを表す似た言葉です。
特筆は、目立つ点や評価に値する点へ焦点が当たりやすいのに対し、特記は、通常の記載とは別に書き添える事項という意味で使われる傾向があります。
申込書やカルテ、業務記録などでは、特記事項という表現を見かけることが多いでしょう。
特筆すべき成果は、成果の際立ちを示す表現です。
特記事項なしは、別途記す事情がないことを示す表現になります。
評価を伝えるなら特筆、記録上の補足を示すなら特記を目安にすると使い分けやすくなります。
注目との違い
注目は、関心を向けること、または人の関心を集めることを意味します。
注目すべき点は、これから目を向けるべき対象を示す際に向いています。
一方で特筆すべき点は、書き手が多くの事実を比較したうえで、特に書き残す価値があると判断した対象を示します。
新商品が注目を集めているという文は、世間の関心を表します。
新商品の販売初動は特筆すべき結果だったという文は、結果を記録や報告で強調する表現です。
似た言葉でも、関心の向き先を述べるのか、記述する価値を述べるのかによって選び方が変わります。
顕著と卓越の違い
顕著は、はっきりと目立つ様子を表す言葉です。
顕著な増加、顕著な差、顕著な傾向のように、数値や変化が明確に現れている場面で使われます。
卓越は、能力や品質が非常に優れていることを表します。
卓越した技術、卓越した判断力のように、優秀さを強く評価する場面に向いています。
| 言葉 | 中心となる意味 | 使いやすい対象 |
|---|---|---|
| 特筆 | 特に取り上げて記す価値 | 成果、事実、注意点 |
| 特記 | 別に記しておく事項 | 補足、例外、記録事項 |
| 注目 | 関心を向けること | 話題、傾向、人物 |
| 顕著 | 明らかに目立つこと | 差、増減、変化 |
| 卓越 | 抜きん出て優れていること | 能力、技術、品質 |
特筆は、対象が優れていることだけでなく、例外的で共有すべきことにも使える点で、顕著や卓越とは役割が異なります。
ビジネスでの特筆の注意点
続いてはビジネスで特筆を使う際の注意点を確認していきます。
根拠を添える書き方
ビジネス文書では、特筆すべきという評価だけで終わらせないことが大切です。
何が、どの程度、なぜ重要なのかを補足すると、読み手は判断しやすくなります。
たとえば特筆すべき成果がありましたと書くよりも、前年比二十パーセント増を達成し、新規顧客の継続率も向上した点は特筆すべき成果ですと書くほうが明確です。
数値がない場合でも、担当範囲、実施内容、影響範囲を示す方法があります。
評価語を先に置き、後から根拠を探す書き方ではなく、事実を整理してから必要に応じて特筆と表現すると、文章の信頼性が高まります。
過剰な強調を避ける判断
企画書や営業資料では、魅力を伝えようとして特筆すべきという表現を何度も使いたくなるかもしれません。
しかし、すべての特徴を特筆すべきと表すと、何が本当に重要なのかが伝わりにくくなります。
特筆を使うのは、競合比較で明確な違いがある場合、顧客の意思決定に影響する場合、リスクとして事前共有が必要な場合などに絞るとよいでしょう。
強調表現の数が多いほど、文章の説得力が増すわけではありません。
特筆すべき情報を一つか二つに絞ることで、かえって重要度が伝わりやすくなります。
資料の見出しや要約文では、まず結論を平易に示し、本文で特筆すべき理由を説明する構成が読みやすい形です。
相手に配慮した伝え方
相手の成果を特筆すべきと評価する場合は、肯定的な表現として受け取られることが多いでしょう。
一方で、問題点を特筆すべきと記す場合は、責任追及のように響かないよう配慮が必要です。
個人のミスに焦点を当てるより、業務上の課題、確認が必要な事項、再発防止に向けた論点として表現すると、建設的な文章になります。
たとえば担当者の対応に特筆すべき問題があると書くより、手順の確認不足が見られた点は、再発防止の観点から特筆すべき課題ですとするほうが適切です。
事実、影響、対応策を分けて記載すれば、読み手も状況を冷静に把握できます。
特筆の理解と活用のまとめ
ここまで特筆の意味と活用方法を整理してきました。
特筆は、とくひつと読み、数ある事柄のなかから特に取り上げて書く価値があることを表す言葉です。
特筆する、特筆すべき点、特筆すべき成果といった形で使われ、ビジネス文書や報告書では重要な情報を際立たせる役割を果たします。
特筆は単なるほめ言葉ではなく、記録や共有に値する特徴を示す言葉と理解すると、使い方を判断しやすくなるでしょう。
特記は補足事項、注目は関心を向ける対象、顕著は明確に目立つ状態を表すため、文脈に応じた使い分けが必要です。
特筆すべきと書く際には、数値や具体的な出来事を添え、強調を重ねすぎないことも意識してください。
読み手にとって何を優先して知るべきなのかを考えたうえで使えば、文章の要点が明確になり、伝達力の高い表現になるはずです。