光子の運動量とは?公式と導出方法も!(p=h/λ:なぜ運動量があるのか:計算方法:光圧など)
光は質量をもたないと説明される一方で、物体を押したり、原子に力を及ぼしたりします。
この性質を理解する鍵が、光の粒として扱う光子の運動量です。
代表的な公式である p=h/λ は短い式ですが、波長、周波数、エネルギー、相対性理論など、多くの物理の考え方につながっています。
この記事では、光子がなぜ運動量をもつのかを出発点に、公式の導出、数値計算、光圧の仕組みまで順番に解説します。
光子の運動量と基本公式

それではまず光子の運動量と基本公式について解説していきます。
光子に質量がなくても運動量がある理由
古典力学では、運動量は質量 m と速度 v を掛け合わせた p=mv で表します。
この式だけを見ると、静止質量がゼロである光子には運動量がないように感じるかもしれません。
しかし、高速で運動する粒子を扱う相対性理論では、エネルギー E、静止質量 m、運動量 p の関係をより一般的な式で表します。
E²=p²c²+m²c⁴
c は真空中の光速を表します。
光子では静止質量 m がゼロなので、上の式は E=pc になります。
したがって、光子の運動量は p=E/c と求められます。
光子がエネルギーを運ぶ以上、そのエネルギーに対応する運動量も運ぶというのが重要な考え方です。
質量がないことと、力を及ぼせないことは同じではありません。
p=h/λ の意味
光子の運動量を波長 λ で表す公式が p=h/λ です。
h はプランク定数で、値はおよそ 6.626×10⁻³⁴ J s です。
λ は光の波長であり、メートル単位で代入します。
この式から、波長が短い光ほど運動量が大きいことが分かります。
たとえば紫外線やX線は可視光より波長が短く、1個の光子あたりの運動量も大きくなります。
反対に、赤外線や電波は波長が長いため、光子1個あたりの運動量は小さくなります。
光子の運動量は波長に反比例します。
波長を半分にすると、1個の光子がもつ運動量は2倍になります。
運動量と進行方向の関係
運動量は大きさだけでなく、向きをもつベクトル量です。
光子の運動量ベクトルは、光が進む方向に向きます。
鏡に光を当てると、反射前後で光子の進行方向が変化します。
その変化分の運動量は鏡へ渡されるため、鏡には小さな力が働きます。
この現象は、光が単なる明るさではなく、物体と運動量をやり取りする存在であることを示しています。
実際の力は非常に小さいものの、高感度な実験装置や宇宙空間では無視できない働きになります。
公式の導出とエネルギーの関係
続いては公式の導出とエネルギーの関係を確認していきます。
プランクの関係式から求める方法
光子のエネルギーは、プランクの関係式 E=hν で表されます。
ν は振動数であり、1秒間に波が振動する回数です。
また、真空中で光速 c、波長 λ、振動数 ν の間には c=λν という関係があります。
光子については相対性理論から E=pc なので、ここへ E=hν を代入します。
pc=hν
p=hν/c
c=λν より ν/c=1/λ
したがって p=h/λ となります。
この導出では、量子論のエネルギー式と、光の波動としての性質が一つの公式に結び付いています。
波長が分かれば光子の運動量が分かるため、実用上も扱いやすい式です。
周波数を用いた表し方
波長ではなく周波数が分かっている場合には、p=hν/c を使います。
レーザーの周波数、電波の周波数、原子が放出する光の周波数などを扱う際に便利でしょう。
周波数が高いほど、光子のエネルギー hν は大きくなります。
同時に、運動量 hν/c も大きくなります。
波長と周波数は c=λν で結ばれるため、どちらを使っても最終的な物理的内容は変わりません。
| 表し方 | 光子の運動量 | 使いやすい場面 |
|---|---|---|
| 波長による表現 | p=h/λ | 可視光、レーザー波長、分光データ |
| 周波数による表現 | p=hν/c | 電波、振動数、量子遷移 |
| エネルギーによる表現 | p=E/c | 光電効果、粒子反応、エネルギー収支 |
光の粒子性と波動性
光子の運動量は、光が粒子と波の両方の性質を示すことと深く関係します。
波長 λ は波動としての光を表す量です。
一方、h/λ という量が1個の光子に対応する運動量になる点は、粒子性を表しています。
電子などの物質粒子にも、p=h/λ という同じ形の関係が成り立ちます。
これはド・ブロイの関係式と呼ばれ、運動量をもつ粒子には波長が対応するという考え方です。
光子は特別な例ではなく、量子の世界で運動量と波長をつなぐ代表例といえます。
光子の運動量の計算方法
続いては光子の運動量の計算方法を確認していきます。
単位をそろえる手順
p=h/λ を計算するときは、波長をメートルに換算することが大切です。
可視光の波長は通常 nm で示されますが、1 nm は 10⁻⁹ m です。
たとえば 500 nm は 500×10⁻⁹ m、つまり 5.00×10⁻⁷ m になります。
プランク定数を J s で使えば、計算結果の単位は kg m/s になります。
これは通常の物体の運動量と同じ単位です。
nm のまま代入すると、答えが10億倍ずれてしまいます。
計算前に波長を m に直す習慣が重要です。
可視光を使った計算例
波長 500 nm の緑色付近の光子について、運動量を求めてみましょう。
波長は λ=5.00×10⁻⁷ m、プランク定数は h=6.626×10⁻³⁴ J s とします。
p=h/λ
p=6.626×10⁻³⁴÷5.00×10⁻⁷
p=1.33×10⁻²⁷ kg m/s
1個だけなら極めて小さな値です。
ただし、光源からは膨大な数の光子が放出されるため、合計した効果は測定可能になります。
レーザーが微小粒子を動かせるのも、多数の光子による運動量の受け渡しが積み重なるためです。
波長ごとの大小比較
同じ光子であれば、波長が短いほど運動量は大きくなります。
次の表では、代表的な電磁波について1個の光子のおおよその運動量を比較します。
| 電磁波の例 | 代表的な波長 | 光子の運動量のおおよその値 |
|---|---|---|
| 電波 | 1 m | 6.6×10⁻³⁴ kg m/s |
| 赤外線 | 10 μm | 6.6×10⁻²⁹ kg m/s |
| 可視光 | 500 nm | 1.3×10⁻²⁷ kg m/s |
| 紫外線 | 100 nm | 6.6×10⁻²⁷ kg m/s |
| X線 | 0.1 nm | 6.6×10⁻²⁴ kg m/s |
表の値からも、短波長のX線が大きな運動量をもつことが読み取れます。
ただし、物質に与える影響は運動量だけで決まるわけではありません。
光子の数、吸収率、反射率、照射時間、対象物の性質も合わせて考える必要があります。
光圧と運動量保存の仕組み
続いては光圧と運動量保存の仕組みを確認していきます。
光が物体を押す現象
光圧とは、光が物体の表面に当たったときに生じる圧力です。
光子が吸収されると、進行方向の運動量が物体へ渡されます。
光が反射される場合は、光子の運動量の向きが反転します。
そのため物体が受け取る運動量の変化は、吸収される場合より大きくなります。
完全反射に近い表面ほど、同じ光でも大きな光圧を受けやすい点が特徴です。
この説明の基礎になるのが、系全体の運動量保存則です。
吸収面と反射面の違い
光の強さを I、光速を c とすると、垂直に光を受ける面の光圧は近似的に求められます。
完全に吸収する面では 光圧は I/c
完全に反射する面では 光圧は 2I/c
反射面で値が2倍になるのは、入射した光子が戻る方向へ進むことで、運動量変化が2倍になるためです。
実際の素材では、吸収、反射、透過が同時に起こります。
そのため厳密な光圧を求めるには、表面の反射率や透過率、入射角も考慮します。
光圧は光のエネルギー流がもつ運動量の流れとして理解できます。
単に明るいだけではなく、どれだけのエネルギーが単位時間に届くかが重要です。
宇宙空間で注目される理由
地上では空気抵抗や重力、摩擦などが光圧より大きくなりやすいため、光圧の効果を日常的に意識する場面は多くありません。
一方、宇宙空間では長い時間をかけて光圧が作用し、宇宙機の軌道や姿勢へ影響を与えることがあります。
太陽光を帆に受けて進むソーラーセイルは、その性質を利用する代表例です。
燃料を使わずに大きな推進力を得る方式ではありませんが、継続的に力を受けられる点に価値があります。
光子の小さな運動量が、長時間では大きな軌道変化につながることは、宇宙工学の興味深いポイントでしょう。
光子の運動量が使われる技術と実験
続いては光子の運動量が使われる技術と実験を確認していきます。
レーザーによる微粒子操作
集光したレーザー光で微小な粒子を捕捉する技術は、光ピンセットと呼ばれます。
透明な微粒子に光を当てると、屈折や散乱によって光の進行方向が変わります。
そのとき光子の運動量が変化し、反作用として粒子に力が働きます。
この力を精密に利用すると、細胞、DNA、微粒子などを非接触で扱えます。
対象が小さいほど重力や慣性の影響が小さくなり、光子の運動量による力が相対的に重要になります。
光は観察するだけでなく、微小な対象を動かす道具にもなります。
原子の冷却と量子制御
原子にレーザー光を当てると、原子は光子を吸収した方向へわずかな運動量を受け取ります。
その後に光子を放出すると、放出方向はランダムになりやすいため、平均すると吸収方向の力を利用できます。
原子の運動方向と逆向きに適切な周波数のレーザーを当て続けると、原子の速度を下げられます。
これがレーザー冷却の基本的な発想です。
温度は粒子のランダムな運動と関係するため、速度を抑えることで非常に低い温度へ近づけられます。
原子時計、量子計測、量子コンピュータの研究でも重要な技術です。
散乱実験と測定への応用
光子が電子などに衝突すると、光の波長や進行方向が変化することがあります。
この変化を測定すれば、衝突前後のエネルギーと運動量の関係を調べられます。
コンプトン散乱は、光子が粒子として運動量をもつことを理解するうえで代表的な現象です。
また、光の圧力や散乱による力は、高精度な計測機器では外乱になることもあります。
高感度の鏡や微小振動子を扱う装置では、レーザーの出力変動が機械的な揺れにつながる場合があります。
利用する側でも抑える側でも、光子の運動量を定量的に把握することが欠かせません。
光子の運動量で押さえたいポイントまとめ
最後に光子の運動量で押さえたいポイントをまとめます。
光子は静止質量をもたない粒子ですが、エネルギーをもち、運動量ももちます。
基本公式は p=h/λ であり、波長が短い光ほど1個あたりの運動量は大きくなります。
周波数を使う場合は p=hν/c、エネルギーが分かる場合は p=E/c と表せます。
公式は、プランクの関係式 E=hν、光の関係式 c=λν、相対性理論の関係 E=pc を組み合わせて導けます。
数値計算では、nm や μm で示された波長を m に換算してから代入することが大切です。
光が吸収または反射されると、光子の運動量変化に対応して物体へ力が働きます。
これが光圧であり、ソーラーセイル、光ピンセット、レーザー冷却、精密計測などに応用されています。
光子の運動量は p=h/λ という式だけで終わるテーマではありません。
光の波動性、粒子性、相対性理論、運動量保存則をつなぐ重要な入口です。
公式の意味を波長とエネルギーの両方から捉えると、光がなぜ物体を押せるのかも自然に理解しやすくなるでしょう。